第弐拾幕の拾参
皆様お待ちかね、追加戦士の時間です。
プチッツァとしての命を散らした鳥羽ひかりが蘇り、そして振袖小町に覚醒した。まさに青天の霹靂であった。
彼女は僅か1ミリ秒で変身を完了した。では、その原理を説明しよう。
「開花!」と叫んだ後に、簪を髪に挿す。すると、纏っていた服が光の粒子となって消え、彼女の背からかつてのように翼が生えてくる。もっとも、それは実体ではなく光でできているものであった。
生えた翼は左の翼が前になるように彼女の体を包み、そこから大量に抜けた銀色と黒の羽根が手足を包んでいく。
前腕を包んでいた羽根が一斉に吹き飛ぶと、銀色に黒い模様が入った小袖が形成される。
足首を包んでいた羽根が吹き飛ばされた後には、銀色と黒のハイヒールがその足に履かれていた。
体を包んでいた両翼は、黒が差し色に入った銀色のノースリーブの着物ドレスに姿を変えた。その上から腰に光が巻き付き、金色の帯となり、背中で蝶結びがされる。
そして簪に付いた銀色の六角形の水晶が光ってから着地。これにて変身完了である。
「ガアアアアアアアアアアアアア!!」
触手で振袖小町を捕まえたまま、ハンジールはひかりに向かって歩を進める。彼の拳がひかりに飛んでくるが、両手を前にクロスして防御。小袖が金属のように固まってダメージを防いだ。
そのまま高くジャンプしたひかりは空中で回転し、硬くなった小袖をカッターのように扱って触手を切断する。切られた触手は締め付ける力を失い、さくらたちは拘束から解放された。しかしこれにより体力を激しく消耗した彼女たちは変身が解除されてしまう。
その後もハンジールは力任せにひかりを狙うが、次々に攻撃を受け流される。彼女の戦いぶりはまるで金属の硬さと柔軟さの両立のようであった。
すると、ハンジールの体の動きが突然止まる。今がチャンスかと思ったが……。
「あれ見て!」
彼の肥大化した心臓が激しく動いているのが人間の目でも分かるようになり、鼓動はイナリの耳には聞こえるほどに大きくなる。このままでは彼の体は爆発し、大量の瘴気が地上を汚染してしまうという。
「ハンジール、今助けるよ!」
両手を斜め下に構えると、両手に刀が現れ、二刀流で構える。右手に持った白い束の刀が「鋭刀・白銀」、左手に持った黒い束の刀が「鋭刀・黒鋼」である。
それらをハンジールに向けて構えると、二振りの刀の刀身がきらりと輝く。そして視覚を研ぎ澄ませ、彼の体に取り付いている瘴気の核ともいえる部分がどこにあるかを見抜いた。
「邪悪なるものよ、月の如く冴えわたり散華せよ! 素波銀刀!!」
暴走しているハンジールに対し、ひかりはまっすぐ駆ける。そして彼の肥大化している心臓だけを取り除いて斬撃を繰り出す。
倒れた彼の肉体から瘴気が抜け、元の彼に戻りその場で倒れる。そこから肥大化したままの心臓だけが独立して動き出し、光線を放ってくる。爆発でもすればこちらの体が持たない。遠距離からの攻撃に切り替えるべく、刀身を平行にして2つの刀を合わせ、鍔の部分からおよそ30度折り曲げる。
「刀が、変形した!?」
鋭刀・白銀と鋭刀・黒鋼は変形合体し、レールガン「撃銃・鋼鉄」となる。
「邪悪なるものよ、太陽の如く輝き散華せよ! 金聖玉振!!」
刀身だった部分の間に電撃が走り、光線となって発射される。それは心臓を貫き、心臓はハンジールの体に戻っていく。
彼の体は浮かび上がり、言葉を発していく。
「ありがとな、気合と根性、見せてもらったぜ」
彼の体はそのまま天に昇り光となって、消えていった。彼の魂は救われ、真の意味でワイルド師岡は真の意味でその生涯を終えたのである。その足元には、彼の体内にあった亥の力を宿した内側にイノシシが描かれた振袖のカケラがあった。ひかりはそれを拾い、イナリの額に当てて回収を完了する。
振袖小町の仲間となったひかりは元の姿に戻り、さくらたちに歩み寄る。
ひかりはさくらに手を差し出し、彼女は握手に応じる。かんなも仲間として握手するが、蓮、あおい、アイリス、かりんの心中は複雑なもので、応じることはできなかった。
さくらとは打ち解けることができて明るくなった表情はすぐに影が差し、何も言わずに去って行った。
「ひかり……」
さくらとかんなはその背をただ見送ることしかできなかった。
宮本武蔵の時代から日本人は二刀流が大好き、そしてそれが変形合体して武器になるのも、好きだよな?




