第弐拾幕の玖
バトルもので「やったか!?」は料理漫画で先に出すのと同義。
「こうなったら!」
息を合わせて純扇・彩を出した4人の振袖小町は、ハンジールの猛烈な攻撃を避けながら彼を中心に囲むようにして軽やかに舞いを舞っていく。
「「「「邪悪なるものよ、幸運に散華せよ!」」」」
「百!」
「華!」
「繚!」
「乱!」
大詰めが決まれば、扇を閉じると同時に浄化のエネルギーがハンジールに注ぎ込まれて彼が元通りになる……はずだった。
一瞬だけ動きが止まる。さくらは安堵の表情を見せる。
「やったか!?」
蓮が口走った言葉に、かりんはこの後の展開がわかってしまったと言わんばかりの不安な表情を見せる。
「ガアアアアアアアアアアアアア!!」
彼女の思った通り、ハンジールは4方向から振袖小町が放ったそれぞれの力を持つエネルギーを浴びたにもかかわらず、それをものともせず咆哮をあげながらのしのしと足を踏みしめ再び動き始めた。怪力と鍛え抜かれた肉体でこれまで振袖小町を苦しめ、オリエント・ゾディアックの中でも強敵の一人だと警戒してきたハンジールが、これまでの敵はおろか以前の彼とは比べ物にならない自らが抑えきれていないレベルの力で破壊の限りを尽くすのをどうやって止めればいいのか、振袖小町は困り果てていた。
泣きっ面に蜂と言わんばかりに、ハンジールは体から触手を生やし、振袖小町を捕らえる。
「う、動けない……!」
身動きが取れなくなった彼女たちはそのまま空中で触手に絡みつかれながらもがくも、一向にほどけそうになく、ほどこうにも腕が使えないため尚更困難を極めていた。
「どうすればいいんだ……? 考えろ、考えろ俺……」
戦う力を持たない蓮やかんなも、この事態の打開策が浮かばなかった。自分たちが矢面に立ったところで戦局は覆るはずがなく、時間稼ぎすらままならず、むしろ藪蛇にしかならない。プチッツァとの戦いで大破したNEWキモノが無事なら、あるいはそれに比肩するような新戦力があれば、あるいは新たな力を手にするような展開が起これば……と思案するも、ないものねだりしかできなかった。
そんな中、かんなが持っていた振袖のカケラがうっすらと光り出す。
「……ここは?」
足元が雲でできているが花が咲き乱れ、一面は青空が広がる不思議な空間で、イナリは目を覚ます。その直後、手元にあった鳥が中に描かれた振袖のカケラから、ひかりが目の前に現れる。
「……プチッツァ!? 倒したはずじゃ!?」
これまでのこともあって警戒するイナリに対し、敵対心は持っていないことを示すために両手を広げる。それは罪悪感から逃れるためのパフォーマンスではなく本心からのもので、その証拠にこれまで会ってきた中で彼女から感じられた邪悪な気配が消えていた。
この作品は全年齢向けですので触手は動きを封じるだけ。相手の体内に入ったりはしません。




