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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第弐拾幕「白銀」
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312/327

第弐拾幕の捌

人を捨てさせられた怪物が暴れまわる。

 さくらたちがこれといった収穫も得られないまま別行動している蓮たちに連絡しようとした、その時であった。

「グルァァァァァァ!!」

 異様な叫び声が聞こえる。駆けつけると、肌の色が鈍い鉄のような色に変色し、筋肉が今までの倍以上に発達して体全体が人間離れしたほどに巨大化したハンジールであった。

 人々の避難と仲間たちへの連絡をかんなに任せ、さくらとあおいは振袖小町となって彼の暴走を止めに入った。

 聖剣・紅と烈槍・紺碧の一撃をものともせず、彼は無差別に破壊行為を繰り返した。そこからは、彼の信条である「気合と根性」はどこにも散見されなかった。

 破壊した中から、根元から折れ曲がって倒れた道路標識やガードレール、駐輪場からはみ出して将棋倒しになった大量の自転車、ボーナスステージの後の如くボコボコになって廃車となった車、車道に無造作に倒れているバイク、彼に殴られた衝撃で拳の跡がついた自販機といった金属でできたものを手当たり次第に食べていった。さくらとあおいが異様な光景に目を疑っていると、彼の体はさらに肥大化し、体の色もさらに黒ずんでいった。

 ハンジールが巻き起こす無双状態の動向を、廃屋の自室に設けたモニター越しに鑑賞していたカルネロは、今までにないくらいの愉悦を見せていた。

「そうだ、これだ! あの筋肉バカも役に立つものだな! あいつだからこそこの実験がうまくいった!!」

 かつての仲間が恐ろしい怪物に変貌していくことにチュイは血相を変えて震えだすが、ボヴィーニは密やかで妖艶な笑みを浮かべていた。

 招集された悪しき心を持つ少年少女たちが自由時間を思い思いに過ごしている中、石神は揉め事になったときに起きた頭痛を収めるために一足先に休憩して空き部屋にあったベッドに横になっていた。収まって本調子になった彼は、好奇心から彼らが何をしているのかのぞき見していた。

「すげぇ……! ただのホラ吹きおっさんだと思ってたけど、あいつの言ってた通り本物なんだ……!」

 目に飛び込んできた光景の影響は大きく、自分も何もかもを蹂躙できるほどの強大な力を手にすることができる期待に胸を躍らせていた。

 この恐ろしい事態は、天界に昇ったひかりの目にも届いていた。かつての仲間が見る影もない落ちぶれた姿で暴れまわっていたことに、力に溺れて周りの声が一切耳に入らずに四面楚歌に陥ったかつての自分を重ね合わせて胸が痛んでいた。ロンが自分と戦おうとしなかった理由を理解した瞬間でもあった。

 彼女の感情とリンクするかのように、イナリの手元にあるのぞき込むと鳥が映っている振袖のカケラが激しい光を放ち始める。その光を浴びた彼は、意識が遠のき、振袖のカケラとともに火宮家から姿を消す。

 アイリスたちもハンジールが暴れている現場に駆け付けたが、その頃には最初のころよりももっと勢いが増し、町を守ることで手いっぱいになっていた。それでも完全には食い止めることができず、だからといって反撃も通用せずどんどん被害が広がる悪循環になっていた。

 大暴れするハンジールの姿はニュース速報でも報道され、負傷して入院していたアイル・ノーズとランディ萩山も病室からテレビで見て戦慄していた。

「Oh my god……」

「師岡さん、なんでこんなことに……」

 気合と根性のかけらもない姿に開いた口が塞がらない二人の戦友の姿など知る由もなく、ハンジールは暴れ続けていた。

「はい、現場の菊池です、ワイルド師岡とそっくりの怪物は引き続き暴れており……うわぁっ!!」

 ニュース速報のためにやってきたレポーターの菊池は、ハンジールが破壊した建物の破片が飛んできてカメラマンともども避難を余儀なくされ、破片はカメラマンが持っていたビデオカメラを破壊した。

怪物に変貌したハンジールは金属生命体を埋め込まれたプロレスラーをオマージュしてます。彼の命と心を救うことはできるのか。

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