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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第弐拾幕「白銀」
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309/326

第弐拾幕の伍

たった一つの真実を見抜け。

 蓮、アイリス、かりんはランディ萩山が襲われた際にトレーニングしていた現場である超日本プロレスの道場を訪れていた。

「犯人は現場に戻る、これ鉄則」

「でも本当に来るの?」

「それは……」

 推理ものの小説や漫画にありがちなパターンが現実でも適用できるとは素人であるかりんは断言できない。そこに、一人の不審人物を見かけ追いかける。

 蓮が追いついて確保したところ、なんとスキロスであった。しかし、以前見かけたときに比べてかなりやつれていた。

「お前たちは!」

「スキロス! プロレスラーを襲ったのはお前か!」

 一連の事件について問い詰める蓮に対して、問い詰められた側は状況が呑み込めないといった表情をしていた。

「その事件については本当に知りません……。あなたたちが話しているその日はプチッツァが私たちを従わせようとして、それを止めようとして……私は吹き飛ばされましたから」

 第二の事件であるランディ萩山の襲撃時はどうしていたのかを尋ねる。すると彼は思いもよらぬ行動に出た。

「百聞は一見に如かずです、護裏霧中」

 なんと、自らと蓮たちに大詰め「護裏霧中」をかけたのだ。

 すると4人の周りの景色が一気に変わり、そこでは目の前にいるはずのスキロスの声が聞こえてきた。今彼らがいるのは彼の記憶の中である。

 プチッツァとの激闘が繰り広げられていたのと同じ頃、蚊帳の外になっていたスキロスは空腹に苛まれていた。思わぬ形で因縁の相手を見つけることができた、しかし追う体力が残っていなかったうえに現金を一切持っておらず途方に暮れていたのだ。

「お兄さんどうしたの?」

 そこに、一人の若い女性が声をかける。彼女の顔にかりんが反応する。

「この人! Dianthus from.JPNにいた蘭サマ!」

「でぃあ……? なんですかそれは?」

 たまたま会っただけで名前も知らずに別れた相手を知っていたことに驚きながらも、スキロスは何者なのかを尋ねる。

 かりんによれば、彼女は永田蘭(ながたらん)という名前で、Dianthus from.JPNというかつて因幡卯月がいたアイドルユニットでは中性的な顔立ちで女性ファンを中心に支持を得ていた所謂イケメン枠のメンバーだった。彼女はグループそのものの説明を始め、ラパン、つまり本人は気づいていないが当人の前で披露したモノマネの元ネタでもあるとあるショッピングモールの野外ステージで開催されたライブでたまたま居合わせたあるファンが卯月を撮影した写真がSNSやネット上で「奇跡の1枚」として評判を呼び、「人類史上最高の美少女」と評され一躍時の人となり、多方面からの人気を獲得した。

「ここまでは良かったんだけどねぇ……」

 かりんは遠い目をしながら彼女たちのその後についての話を続けようとしたが、スキロスが自分の大詰めで自らの記憶を投影できるのは制限時間があるとして閑話休題を迫ってきた。

 蘭は彼から事情を聞き、彼が2日間何も食べていないと聞くや否やおごると言い出す。初対面でいきなりそんなことを言いだすのだから面食らったが、彼女の言葉はその場限りの出まかせではなく、実際に近くにあった安さが売りのイタリアンレストランチェーン店「ミモザ」に行ってパスタをおごっていた。

「上機嫌だった彼女に理由を聞くと、明日久々に仲間たちと会うと話していて、それはもう楽しみだというのがにじみ出ていました」

 そこで彼の記憶の再現は終わり、周りの景色がもとに戻る。

アイドルユニットに中性的顔立ちのイケメン女子がいると嬉しい、それが俺。

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