第弐拾幕の弐
替えがなかなか効かないものが世の中には存在する。
「いつ見てもひどい惨状だ……」
振袖小町と共闘したオリエント・ゾディアックのメンバーたちは、焼け落ちてしまった廃研究所に何か使えるものが残っていないか捜索していた。しかし姿を消して久しいカルネロの研究室はもぬけの殻、ところどころに細かい金属が散乱しているのみだった。それぞれの部屋にあった私物はほぼ焼失していた。そしてNEWキモノのパーツが一つ残らず消えていたことにロンが気付く。悔やんでも悔やみきれない思いがそれぞれにあったが、その中でもキマは高価な衣服や靴が焼け落ちてしまったことを嘆いていた。
「仮に機材が無事だったとしてもネガボットの素体を作れるのはカルネロだけ、俺たちだけではどうしようもできない」
「今できることをやるしかないか」
「ん……なんだこの写真は?」
無事だったものの中から、ゴーダが一枚の写真を拾う。そこには、たくさんの子どもたちに囲まれて笑顔を見せるワイルド師岡としてのハンジールの姿があった。その写真に映っていた子どもたちの中に今よりも数年前と思われるプチッツァやエリーがいたことには、世界の狭さへの驚きを隠せなかった。
「そういや……ハンジールはどこで何してんだ……?」
「さあ? いつもみたいにどこかのジムで筋トレでもしてるんじゃねぇか?」
何も言わずに単独行動を開始し、ここ最近姿を見せていないハンジールの安否を心配しているところに、セルペンテが戻ってくる。リリーワイバーン号を返却しに行ったところ、住居が火災に遭ったことを話すとなんと桃香が自宅に泊めてくれたという。若い異性を自宅に泊めるという行為に、一歩間違えれば危険極まりない行為をいともたやすくしてきたことには相手が不用心すぎると心配になるレベルではあったが、特に何事もなかったそうで話に興味津々だったキマは相手のことを考えれば安心できたが本音を言ってしまうと肩透かしを食らっていた。ロンの目には、期待と不安が入り混じっていた。ふと足元を見ると、焼失を免れていた写真立てが落ちていた。
「この写真は……」
中に入っていた写真は、1枚はかつて生前のプチッツァ、つまり鳥羽ひかりがエリーたちフリージアの仲間たちと撮影した集合写真、しかし彼女の向かい隣の人物にだけ火の粉が飛んで顔が焼け焦げていた。
その下にはもう1枚写真があり、そちらにはこの上ない幸せをかみしめた笑顔を見せている夫婦と、抱きかかえられている1歳くらいの子どものものだった。
写真立てがプチッツァのものであったことから幼児は後の彼女だとすぐにわかったが、その両親の顔を見たロンはある事実に行きつく。
「(まさか……プチッツァの生い立ちは……)」
一方、ティーガーは惨状の中に違和感を抱いていた。
「(……あれだけあった不幸の蜜はどこに行ったんだ……? まさか、カルネロが……!?)」
替えの効くものは焼失したが効かないものは残ったのは彼らにとって不幸中の幸いだったことでしょう。




