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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第拾玖幕「救済」
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301/331

第拾玖幕の拾壱

共闘の時間がやってきた。

「みんな聞いて!」

 突然の声にプチッツァも攻撃の手を止める。

「ここ、もうすぐ焼け落ちるかもしれない。屋根の上、見て」

 あおいが屋根を指差すと、屋根に落下し大破したNEWキモノに火の羽根が引火し、火事が発生していた。

「そういやさっきから煙の匂いがするとは思っていたが……」

 灯台下暗し、ずっと視線は上だったが皆プチッツァに向いて気付かなかったのである。この声を聞くや否や、セルペンテは再びヘルメットをかぶりリリーワイバーン号のエンジンをかける。

「取りに行くものがあるから俺は今から中に行く! しゃあねえ、真打はお前に譲ってやるから絶対プチッツァをなんとかしてこい!」

 周りの制止を振り切り、さくらに後を託しながらペダルを踏みしめて廃研究所の中へと一直線に飛んでいった。ロンはその背を見送りながら、彼女が自分のことを忘れずにいてくれていたことに心を締め付けられていた。

「(百合お嬢様……ありがとうございます……!)」

 廃研究所に火事が発生し、しかもその中にセルペンテが突撃してしまったことから、戦いをこれ以上長期化させることは得策ではなかった。

 ここまでの戦いを振り返り、ティーガーがさくらの武器が剣であることに目をつけある発想をする。そのためにはロンに力を借りる必要があったが、彼は快諾した。

「その間俺は無防備になる。それでも彼女たちを守るくらいならできるが、できる限り早めに決めてほしい」

「ロン! 振袖小町! メイドの姉ちゃんたちのことなら気にすんな、前にコテンパンにされた俺が借り返してやんねえとな」

 戦う力を持たないかんなと体力を大量に消費しているエリーを守ることに関しては決着がついた。

「青い振袖小町、ちょっと手貸しなさい」

 キマがあおいの腕を持って右手を当てる。するとキマの右掌が青く光り出す。

「これであたしはあんたと同じ水の力を使えるようになったわ。黒焦げのライダーとバイクなんてみっともないから見たくないもの、あたしたちで消火するわよ」

 あおいは縦に頷き、燃え上がってきた炎への対処の担当者も決まる。

 残ったアイリスとかりんがさくらをプチッツァがいる上空まで向かわせるサポートに回ることとなったが、いかに成功させるか。それが問題だった。

 三人寄れば文殊の知恵。頑張って知恵を出し合いはするが普段チームのブレーンとして知恵を出しているあおいが消火に回っているためこちらに意見を出せないのが大きく響き、決定打となるような意見が出ず苦戦していた。しかし、さくらは一貫していた考えを持っており、それには誰も異議は唱えなかった。

「ねえ……一つ思いついたんだけど……いいかな……」

 突破口が見つからず苦しむ振袖小町に、頭痛に悩まされながらもイナリが参加する。さくらは三人と一匹寄れば超文殊の知恵になるはずだと思いそのまま意見を出し続けた結果、賭けにはなるが一つの結論に至った。

「仲良し会議はもう終わり?」

 挑発的な言葉に、清々しい表情でさくらが立ち上がる。

「準備ができたようだな」

「かんなちゃん、行ってくるね」

 かんなは黙って首を縦に振る。それを確認した後、ロンが愛刀「竜胆(りんどう)」をさくらの左手に託す。鞘に収めた状態でちょっと持っただけで刀が持つ気迫、そして持ち主が誰かを想いながら戦っていることが伝わってくる。肩にイナリを乗せたアイリスとかりんが並び立ち、二人の前にさくらが立って体制を組み立てる。

「二人とも、いけるよ!」

 さくらの声にふたりがうなずき、まずアイリスが地面に強く両手を当てて、土でできた大きく長い階段を形成する。

 その高さたるや、今共闘しているオリエント・ゾディアックのメンバーはもちろんのこと、これからそれに足を乗せるさくらや作り上げた当の本人であるアイリスですら圧倒されそうになるほどであった。

 できた次の瞬間には、両手に武器を持ったままさくらが全力で駆けあがっていた。竜胆の鞘はさくらが走る勢いで抜けて宙を舞う。その勢いたるやサラブレッドか、稲妻か、はたまた韋駄天に肩を並べるようであった。

「これは……! そうか! 青い振袖小町がやっていた!」

「正解……!」

 満身創痍のイナリが作戦を説明する。ロンやティーガーは無理をするなという気持ちを抱えながらも耳を傾ける。作戦の全貌を耳にして、伝承にあった振袖小町が万能の力を持ち独りで何もかも解決していたことに対し、時代の変わった現代では同じ力の源を持ち、使う力そのものは同じでも役割分担を果たして集団で戦っていく、敵ながらあっぱれと心の中で褒めたたえていた。

時代の変化に合わせることは何事においても大事。

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