第拾玖幕の拾
バイクに乗るヒーローのカッコよさを広めた石ノ森先生は偉大。
MUJINAがカーナビの役割を果たし、廃研究所まであと少しというところで、上空に佇みながら羽を飛ばして攻撃しているプチッツァを目撃する。
「プチッツァ……!?」
「なんだあの翼は……!?」
これまでの彼女と違い6枚の翼を背にして、地上に向けて羽根を飛ばして攻撃している姿が道中からも確認できた。
「ちんたらしてらんねえな! もっと飛ばすけどいいな!?」
リリーワイバーン号のペダルをセルペンテはさらに強く踏み、一直線に駆け抜ける。
バイクが駆ける音がだんだんと近づいてくる。ティーガーだけでなく、振袖小町二人とかんなの表情に明るさが戻ってくる。
「あいつ!」
標的を変更し全色の羽根をリリーワイバーン号に乗るさくらに向ける。羽根は地面に命中して砂煙が巻き上がり、爆炎へと変わっていく。
「やった……!」
プチッツァの表情が一瞬緩む。だが、爆炎が収まると同時に一つの影が現れる。
リリーワイバーン号だった。それも、セルペンテは運転を続けており、その後ろに座っていたはずのさくらは振袖小町の姿に変わっていた。振袖の小袖がバイクが駆ける風圧でなびき、火の粉が風に吹かれて舞い踊っているように見えた。
「ちょっと揺れるぜ!」
セルペンテのドライビングテクは初めて運転するバイクにもかかわらず絶えず降り注ぐそれを軽々と回避していく。さくらは動揺しながらも落下防止を最優先事項としてそちらに神経を集中させる。
「変身中を狙うとか、わかってねぇなぁ。前々から思ってたんだが、あいつワル向きじゃねえわ」
運転している側はなりふり構っていない攻撃に苦言をこぼす。いわゆる「お約束」を破ったことへの共感と同僚に言われてしまうのなら相当向いてないのだろうとさくらは苦笑しながら、彼女が本当はどんな人間なのか悟っていた。
そして廃研究所前まで到着すると、羽根を回避した勢いでブレーキターンの途中で90度回転し、片足を地面に付けながら横にスライドして停車する。かりんはあらゆる作品でオマージュされている有名なシーンをいとも簡単に再現してみせたセルペンテのドライビングテクに舌を巻き、ロンは何度もシートに座ったことのあるかつての姿のままのバイクに彼がまたがって駆けつけたことに郷愁を覚え、降り続いている羽根に混ざり落ちて戻ってきたロケットを握り締めながら必死に涙をこらえていた。
「さくら!」
彼女の到着と同時に、あおいが満身創痍なところに煙を吸ってしまいぐったりしているエリーに肩を貸しながら廃研究所から出てくる。彼女の目を見て、自分が来ることを一番待っていたのはあおいだったことをさくらは感じ取る。そう思ったのも束の間、あおいが場にいる全員に大声で呼びかける。
遅れてやってきたヒーローがどう趨勢を変えるか。




