第拾玖幕の伍
胡散臭い男が一人。
カルネロが到着した廃工場では一人の少女が新たな仲間として迎え入れられていた。その相貌から、先客たちからの第一印象は良好であった。その中の一人は、彼女よりもカルネロの方に目がいく。
「(あの人は……間違いない……)」
紹介された少女、上野かぐやこと上野輝夜姫は、これから自分と行動を共にする顔ぶれの前を確認するかのように通っていく。
「……冴えない連中ね」
吐き捨てるようにかぐやは面々の不満をつぶやく。それが聞こえ、彼らが抱いた第一印象は一気にぶっ壊れ急降下する。しかし怒りを感じていた男子たちのうち、一人の前に再び立って声をかけた。
「でも……あんたはまだよさげ。あたしのボディーガードにしてあげよっか」
小菅だけは例外だったようで、座っている彼の顔を覗き込みながら見つめていた。もっとも、当の本人は眉間にしわが寄っていた。
気性の荒い彼でも女性には手を出せないようでイライラを募らせているが、そんなことお構いなしにK2が声を上げる。
「静かにしろ!!」
立ち上がってそう叫ぶと、彼は自分の体内に取り込まれていた振袖のカケラを取り出して熱弁を始める。
「お前たち! 今目の前にいる方がどなたか知らないとでも言うのか!?」
これまで大きな動きを見せていなかった彼からの声に返ってきたのは、およそ芳しいとは言えない答えだった。
「知らねえな」
「いきなりでかい声出すんじゃねえよ」
「うるさい黙れ」
石神や北沢、小菅の苛立った声にも負けず、K2は話を続ける。
「勉強不足だな! この方はなぁ、振袖のカケラと呼ばれるこの結晶がこれだけの小ささでも人知を超えたあらゆる用途に使うことができる万能の力を持つことを突き止めた、天才物理学者の毛利章広先生だぞ!!」
越後のちりめん問屋を名乗って諸国を旅する先の副将軍の側近が葵の御紋の入った印籠を見せつけるかの如く、K2は振袖のカケラを石神たちに突き付けながら啖呵を切る。当のカルネロは、不意を突かれたような驚いた顔で彼を見つめていた。
かんな、アイリス、かりん、そしてイナリが廃研究所の庭に到着したと同時に、プチッツァに倒され空中から落下してきたエリーを地面に落ちる直前にあおいが受け止め、彼女は不時着を免れ一命を取り留める。
「あおいっち様……助けていただき、ありがとうございます……。どうか、お嬢様と、ひかりを……お願いします……」
主人とその友人たちにこれからを託し、そして視界に入ったロンの顔にどこかで見覚えがあると感じつつ、エリーは気絶する。かんなは救急車を呼ぼうとするが、電波がつながらず呼ぼうにも呼べず、自分以外は戦いに集中していて聞けるような状況ではなかったが土地勘があるであろうプチッツァの仲間の中で尋ねやすそうな者はいるか見てみるが、一人聞くことができそうな人物を見出す。
廃研究所の上空はだんだんと暗雲が立ちこみはじめていた。そして、屋根に大破したNEWキモノが落下する。その衝撃で機械部分から発火し、屋根に移る。そこにプチッツァが放った火の羽根のうちの1枚がふわりと乗り、勢いがつき始めた。
「木谷かりん、いた。あれは、プチッツァ……? なんかやな感じ」
廃研究所近くに様子を見に来たラパンは彼女の態度に反感を覚え、どこかで一泡吹かせるタイミングをうかがい始めた。
勝利条件が一つ増えてしまった、向かい風の突破の鍵は!?




