第拾玖幕の肆
マセガキのキザな所業とNEWキモノの雄姿をご覧あれ。
次の日、さくらもあおいも池に落とされて体を冷やしてしまったことが原因で風邪を引いてしまい、揃って寝込んでしまった。風邪を引かずに済んだが責任感を覚えていた蓮は幼稚園から帰ってきたらすぐに家の手伝いで貯金したなけなしのおこづかいを握りしめ、スーパーの食玩売り場に向かった。
帰ってきた蓮は、買ってきた食玩の箱を持って、彼女の部屋にお見舞いに行った。
「蓮?」
「左手を出して」
言われた通りに出された左手に、蓮は彼女の薬指にそっとおもちゃの指輪をはめる。その大きさは、オーダーメイドではないかと間違えてしまうくらいにぴったりはまった。
「な、ななな何のつもり!?」
蓮は勇気を出して幼稚園児なりの誠意を示した言葉で、今回の一件を踏まえて感じた今の気持ちを告げる。
「昨日のことで思ったんだ。俺、さくらとあおいが泣かないようにこれからずっと守るんだって。約束する。指輪はその証拠」
発熱で頭が働いていないのもあったが、何を言われているのか意味が分からず呆然としていた。
結婚指輪の概念は知っていたが、年齢的な理由で当時はこれがそこまで大きな意味を持っていたとは思っていなかった。しかし、これをさくらとあおいのどちらに行ったのか、それだけが蓮の記憶からはすっぽりと抜け落ちていた。
風邪が完治してもさくらとあおいは意地の悪い一言が心に引っ掛かり、しばらくの間卵料理が食べられなかったのも、今ではいい笑い話である。
成長して体が大きくなり、もうはめることはできなくなってしまって久しいが、相手はその時の指輪を大事に取っておいてあるとはつゆ知らず、蓮は幼い頃の思い出を懐かしんでいた。その直後、ある人物が彼のもとに面会にやってくる。
廃研究所の上空ではプチッツァが水流や竜巻を放つと、エリーは両手を前に出しバリアを形成して防ぎつつ打ち消す。
「もうやめなさい!」
エリーは反撃にルークス・グラディウスで斬りかかるが、こちらも土で形成された盾を張られてしまい破られてしまう。だが、バリアが破れてできた破片をエリーがすかさず左手だけで形成したバリアで反射し、怯んだ隙に後ろに回り込み左手側のルークス・グラディウスで円月状に背中を斬りつけて翼そのものにダメージを与える。さすがにこれは効いたようでプチッツァは数メートルほど落下する。
「さすがえり姉、なかなかやるじゃん」
「そっちこそ、振袖小町の力を使ってるだけあって凄まじい力。しかしそれはあなたのものではない。ただ強くなったつもりでしかない」
空中で繰り広げられる激しい同門対決に、地上にいるあおいと、ロンらオリエント・ゾディアックの幹部たちは割って入れるような空気ではなかった。
だが、この戦いは突然終わりを告げる。
プチッツァの放った炎をエリーが再び両手を前に出してバリアを張って防ごうとした、その瞬間だった。NEWキモノの本体からスパークが発生し、バリアを張ることに失敗して炎の直撃を受けてしまう。
「今だ!」
プチッツァはさらに高く飛び上がり、6枚の翼すべてを光らせる。
「亡若舞刃!!」
彼女の翼から炎、水、土、木、金のそれぞれの力を持った羽根が発射される。地上からはまるで花火が本来の姿とは逆に空から地上に降ってくるように見えた。
NEWキモノを纏っていたおかげでダメージを負う程度で済んだが、次はない。なんとか体を動かし降り注がれる羽根を避けようとしたエリーだったが、思うように言うことは聞かず羽根の大半を受けてしまう形となった。
「強くなったつもりだったのはそっちだったみたいね!」
「ああああああっ!!」
空中でNEWキモノが自壊し、パーツが次々とパージされる。そしてアンダーウェアのみの状態でエリーは地上へと落ちていく。
プチッツァの部屋の窓からもエリーが落下していく姿ははっきりと見え、かんな、アイリス、かりん、イナリは廃研究所を出て彼女の元へ駆けていく。
「「開花!!」」
アイリスとかりんは走りながら振袖小町になり、プチッツァ、そしてエリーがいる外へ向かった。アイリスは体力を消耗しているかんなに肩を貸し、かりんは未だに原因不明の頭痛に苦しめられているイナリを抱きかかえていた。
五行におけるすべての要素が揃った相手、弱いわけがない。




