第拾玖幕の弐
蓮はあれから助かったのか。
蓮の病室に来ていたさくらは、目を覚ました彼と心を通わせていた。
「さくら……無事だったのか」
「蓮も助かってよかったよ、本当にごめんね」
涙を流しそうになるがそれをこらえるさくら。
「さくらのせいじゃないから、気にすんなよ。……俺も戦えたらな」
ぽつりと寂しく小さくつぶやく蓮に、さくらはなんとか笑ってもらおうと試み、突拍子もないことを言い始める。
「もし蓮が戦うことになったら……羽織袴仮面とか? 紋付にする?」
「羽織袴仮面」というなかなかに聞き馴染みがなく、かと言って他でも聞くことはないであろう響きに、これまで固まりがちだった蓮の顔はほころび始める。
「なんだよ羽織袴仮面って。どっからどう見たって不審者じゃん」
「だって振袖じゃ女の子の着物だから女装になっちゃうよ。甚平とか作務衣のがいい?」
別案でも奇天烈さはどっこいどっこい、それぞれの着物を着たうえで、こういったヒーローの定番ともいえるアイマスク型の仮面をつけた自分の姿を想像してみたがそれだけで笑いが込み上げてきてしまった。
「かりんちゃんに話せばデザインとか描いてくれそうだよね。どんな感じになるか楽しみ!」
「じゃあ、みんなが戻ってきたらあおいたちにも意見をもらおうぜ」
「賛成!」
小町部にありがちなことの一つとしてあげられるくらいにおなじみの光景と化したパワフルな女子たちに自分がおもちゃにされそうな流れになる予感はしたが、それすらも今はいとおしいすらと感じる時間になっていた。
「で、ここに来たってことは、何かあったのか?」
まだベッドから起き上がることができないが、治療の甲斐もあってあと数日すれば退院できるという蓮。胸をなでおろすさくらは、自分がフリージアで感じたこと、そしてあおいたちに話したことを蓮にも包み隠さず話した。
「……そうか。お前の気持ちはわかる。でも、幹夫さんが言っていたことも正解のひとつだと思う」
「それで、私はこうすればいいんじゃないかなって考えが自分の中でできたんだ。それは……」
さくらが行きついた考えに耳を傾ける蓮。彼女なりの決意と信念に向き合ってゆっくりうなずき、肯定した。
その直後、これまで輝きを失っていたさくらの簪に付いた水晶が赤く光り出す。そして、今戦いが繰り広げられている場所がどこか、そして今どうなっているのかが脳裏に浮かび上がる。
「蓮、行ってくる。あおいたちを……それから、プチッツァを助けに」
蓮は頷き、決意に満ちた目をしたさくらを見送る。
やっぱり幼なじみ、お互い精神的肉体的につらくてもこんな話ができちゃう。もうお前ら付き合っちゃえよ。




