第拾玖幕の壱
決戦が、始まる。
もともとあった2枚の翼に含め、火、水、土、木のそれぞれの力を宿した翼1枚ずつを背にして、自らが世界を創りかえると宣言したプチッツァ。
その途轍もない力は味方だった者たちですら抑えきれなかった。
そこに、金丸ファウンデーションが振袖小町のこれまでの戦いのデータをもとに製作した、いわば「人工振袖小町」ともいえる「NEWキモノ」を物着、つまり身に纏ったエリーが駆けつけた。自らの仕える主を救うため、そして同じ釜の飯を食った姉妹同然の仲だった一人の少女の暴走を止め、助けるために命がけの覚悟をもって戦いに出てきたのだ。
「ひかり、本音を言えばあなたとは戦いたくない。でも、あなたと同じ場所で育った者としてあなたのことを助けたい、だから……戦う」
NEWキモノの右の小袖が光り、エリーの右手に白い刃を持つ実体剣「ルークス・グラディウス」が現れる。それを持ったまま両手を前に出して左手の掌を刃にかざし、切っ先までスライドさせていくと高密度の粒子で構成されたエネルギーが刃に注入されていき、真っ白な輝きを放ちだす。
「エリー……」
プチッツァの部屋の窓から、エリーが駆けつけたことをかんなは知る。振袖小町のようでそうではないともいえる彼女のヒロイックでメカが特徴的、それでいて優雅な姿に、思惑は理解できたがさすがに度肝を抜かれてしまう。
「かんなちゃん、一体なにがあったの?」
「私たちも戦わなきゃいけないけど、事態を打開するきっかけになるかもしれないから。教えてくれる?」
激しい頭痛にのたうち回るイナリを心配しつつも、アイリスとかりんはプチッツァの生い立ちと振袖のカケラを巡る戦いに身を投じた理由、そしてこの暴走のきっかけをかんなの口から聴きだす。
かんながプチッツァを抱きとめ、友達になろうと提案して彼女から離れた直後のことだった。「友達」という単語に敏感かつ敵対的な反応を示した彼女は、かんなに対して悲しみのこもった怒りの目を向けた。
「あんたさっきまでの話聞いてなかったの!? あたしはもう二度と友達なんてくだらないものは絶対作らないし、そもそもそうやって傷のなめ合いをしてる奴らがあたしは大嫌いなの!!」
地雷を踏んでしまったとすぐにかんなは謝罪するが、焼け石に水であった。
「謝らなくていいよ。私がこれからそんなくだらないものが存在する世界、今から壊すから」
彼女はわなわなと震えだし、背中から6枚の翼を広げる。その刹那、鮮やかさがありながらもどこか影のある美しさに見とれる間もなく衝撃波がかんなを襲う。直撃をもろに受けたかんなは体が壁にぶつかり、翼から抜け落ちた羽根が何枚か体に乗りながら気絶した。
「……信じられない……」
「そんなひどいことする奴がいるなんて……」
想像を遥かに超えた彼女の壮絶な過去及び生涯と、今の彼女を突き動かした理由にアイリスもかりんも顔面蒼白となる。特にかりんはラパンから告げられた話と辻褄が合っていたこともありオリエント・ゾディアックという組織そのものから計り知れない闇を垣間見ていた。
背中から翼が生えた女の子、いいよねぇ……。




