第拾捌幕の漆
扇の要を失ったあおいたちはというと……?
アイリスとイナリが向かった先は、花ヶ咲駅前。そこではセルペンテが待ち構えていた。
「よう、お前にいい情報があるぜ。ただし、タダじゃ教えられないがな!!」
いつものように軽い口調で話しかけるセルペンテだったが、アイリスの背後からイナリが現れると途端にそれが崩れ、顔が青くなっていく。
「で、その情報って何かな? 教えてくれるよね?」
過去に尻を噛まれた因縁の相手から圧力がかけられる。返事ははいもしくはyes、あるいはそれに該当するあらゆる言語の単語しか受け付けないと言わんばかりのプレッシャーに根負けし、二度とあの苦しみと痛みを味わいたくないがゆえにセルペンテはしぶしぶ口を開く。
「……その言葉、信じるから」
アイリスはイナリとともに、目的地へと駆けていった。その背中を見て、セルペンテはほくそ笑んでいた。
「(これで振袖小町とあいつが共倒れになりゃこっちからすれば万々歳だ。キツネに尻を嚙まれたことくらいチャラにできるぜ)」
かりんが到着したのは菊池比奈がレポーターを務める番組などを放送しているテレビ局「けやきテレビ」のスタジオであった。撮影していた番組の当日の出演者とカメラマンやディレクター、照明といったスタッフたちが取り囲んで守る陣形を組み、その中心にいたラパンが中から出てくる。
「ラパン!」
「また会えたね。嬉しい」
「ねえ、プチッツァがどこにいるのか知らない? 友達と一緒にいるはずなんだけど……」
かりんはいつもの飄々とした語り口で、そのつかみどころがない話術で翻弄していく。
「知らない。でもプチッツァが普段いる場所ならわかる」
「なら、教えてくれる?」
かりんの問いに対し、ラパンの口から意外な言葉が出てくる。
「木谷かりん。今から細かすぎるモノマネをやって。面白かったら教えてあげる。つまんなかったら、ここにいるみんなはさようなら。やる?」
とんでもない無茶ぶりをされたうえに失敗したときの大きすぎる代償まで課され尻込みするかりん。だが、これまでの人生で見てきたものを振り返っていき、披露するものを決めて一歩踏み出す。
あおいが駆けつけた場所は、交通量の多い大通りの十字路のど真ん中。そこに、たくさんのなぎ倒された車とともにティーガーが独り佇んでいた。
「あんた、蓮とさくらをあんなに傷つけといてよくのこのこ出てこれたわね!」
「お前なんかに用はない! さくらはどこにいる!」
売り言葉に買い言葉だったが、私情を持ち込まずに冷静さを意識して交渉を持ちかける。
「あなたにとっていい話があるの。聞いて」
「いい話」の内容をあおいが話すと、右手から電撃を走らせながら返答する。
「それは本当か? さくらに会えるんだな!?」
だが、ここは振袖小町のブレーンであるあおいが巧みに交渉術を展開していく。
「本当。でも……条件がある」
条件を説明していくあおい。ティーガーは納得し、彼女に連れられてある場所へと足を向けていく。
三者三様のオリエント・ゾディアックとのシーン、12人もいりゃ因縁はできる。




