第拾捌幕の陸
思いつめるのは悪循環の始まり。
振袖小町一同が見舞いに来た中、さくらが間を置いて口を開いた。
「私ね……これから独りで戦おうと思うんだよね」
この言葉は、その場を凍り付かせた。
「え、どうして……?」
「蓮があんなことになったのは私を庇ったから。それにそのあとフリージアの子どもたちや、まだ中にいた先生にもしものことがあったかもしれない」
否定のできない事実に、誰も言葉を返せず、さくらは言葉を続ける。
「これからもまた、オリエント・ゾディアックが出てくるはず。それなら私だけが戦って、私だけが傷つく、それでいい。戦いのない日が来るまで私はいくらでも戦うし、いくらでも傷ついたっていい。だって……もう誰かが苦しんだり悲しんだりしているところなんて見たくない。それはあおいたちだって例外じゃないの!!」
悲壮な叫びの直後、イナリの額にある石と、振袖小町が持つ簪に付いた水晶が光り始める。ただし、さくらのものを除いて。
「……これは! 3か所にいる! しかもこの感覚、全部幹部だ!」
本人は使命感に駆られているが、どう考えたとしても現場に出向くことなど不可能な状態のさくらを、ここまで黙って話を聞いていた幹夫が彼女に近づいて諭し始める。その隙にイナリの先導であおいたちは現場に向かうが、あおいは一度さくらの方を振り向いてから病室を出ていった。
「おじいちゃん! なんで止めるの!!」
「さくらが今どうしたいか、気持ちはよく分かる。なら……試しに今ここで振袖小町になってみなさい」
「……開花!」
幹夫の言う通りに振袖小町になろうとしたさくらだったが、まるで電池が切れたおもちゃのように簪の石は光らず、何も起こらない。
「なんで!? どうして!?」
何度試みてもそれは変わらなかった。無意識に声がどんどん大きくなるさくらを、幹夫が止める。
「わかっただろう。今はなぜこうなっているのか、考えてみなさい」
幹夫はあおい、アイリス、かりん、イナリが出ていった方へと視線を向け、病室を出ていった。さくらは立ち尽くし、しばらくしてから再びベッドに横になった。
敵襲に向けて出発してすぐの病院の廊下で、あおいはすぐにイナリにあることを尋ねた。できるかどうかはわからなかった彼は、試しに神経を集中させる。すると、見事に成功した。
「ありがとう! じゃああいつのことは私に任せて先に行ってて!」
先へと向かうアイリスとかりんにイナリを預け、あおいは一度来た道を引き返す。向かった先はナースステーションであった。
「すみません……」
あおいは近くにいた看護師にあるものを分けてもらい、再び敵襲のあった3つの地点のうちの1つへと廊下を走らない程度に駆けていった。
気持ちが空回りする、そんなときあるよね。




