第拾捌幕の肆
世界最強の生物、ギャル。
かんなが着けているGPSで送信されている場所では、そんなことがされているとは知る由もなく一つのやり取りが行われていた。
「何それ羽6枚!? どうなってるの!? やばたにえん!!」
背中から翼が生えていることに恐れもせずスマホで撮影しまくるかんな。背中側がどうなっているのか気になり後ろを向いてもらうよう頼む。プチッツァはこいつは自分の立場がわかっているのかと甚だ疑問だった。
「……少しだけだからね」
プチッツァは嫌々背中を向け、すぐ前に向き戻る。そこには、2つの古傷と4つの生傷が服からもうっすらと見え、そこから生えるように翼が伸びていた。さすがのかんなも、これには自分が無神経だったと反省しつつも、壮絶さに言葉を失った。だが、普通なら拒否するようなことを嫌がらなかったことや、やろうと思えば自分とエリーをそのまま見殺しにできたシチュエーションだったところをわざわざ助けてくれたことから、彼女はもとから悪い子だったわけではないと確信を得ていた。
「ねえ、敵とか味方とか抜きにしてさ、ちょっとあたしと話をしようよ」
会話を試みるかんなにプチッツァは自分の立場が分かっているのかと思い口をぽかんと開けてしまう。
「これも何かの縁だし、お互いのことを知らないんじゃ意味ないじゃん。まずは名前から。あたしは金丸かんな。あなたは?」
「……プチッツァ」
不満げに名乗る彼女に、かんなはそれに輪をかけた不満げな顔をする。
「それ本名じゃないじゃん。あなたの本当の名前を教えて」
「……鳥羽ひかり」
さらに不服そうな表情を浮かべるプチッツァ。彼女からも本名で呼ばれても嫌な感情がなかったのが不思議だった。
「……ひかりって、あのひかり!? 10年くらいぶり!!」
幼い日の記憶がよみがえる。それはかんながフリージアに初めて慰問に来た日のことだった。彼女たちが一緒に遊んだ記憶があり、顔は忘れてしまっていたが名前だけは覚えていたため思わぬ形ではあったが再会を喜んだ。
心底納得した顔で笑みを浮かべてから、手を差し伸べる。プチッツァは拒否し、ぎこちないスタートとなった。
彼女が今置かれている立場からは発案されるはずがない、驚愕の提案をしてきた。
蓮の見舞いを終えたあおいがさくらの病室に合流していた。ベッドの上で上半身だけ起こしたさくらは、言葉を切り出す。
「私さ、一つ決めたことがあるんだ」
彼女が言った言葉の続きは、小町部やその周りの人々を揺るがす事態を引き起こすこととなった。
人質なのにケロッとしてる、大物と言うべきなのか……。




