第拾捌幕の弐
令嬢が人質、本来ならば世界規模で報道される事件。
都内の一等地にある大豪邸。その大広間では、エリーが大豪邸の主人、つまりかんなの両親と今後についての話し合いをしていた。
「事情があったとはいえ、お前がいながらこの事態とは……」
「本当に、申し訳ございません……」
より多くの犠牲を出さないための苦渋の決断であり、本人が条件を呑んで成立した取引だったとはいえ、自分が命に代えても守るべき相手が悪の手に落ちたことは紛れもない事実。土下座も辞さぬ覚悟で甘んじて受け止めるエリー。
「しかし、多くの命を犠牲にせずに済んだのだから、手放しでは喜べないが我が娘ながら英断だったともいえる」
「私がかんなと同じ立場なら、きっと同じことをしていたでしょう。西口、居場所はわかりますか?」
「はい、こちらをご覧ください」
エリーがタブレットを取り出すと、画面にはGPSでかんながいる場所を表示し点滅していた。その場所は金丸家の豪邸からはそう遠くない場所を示していた。灯台下暗しとはよく言うが、ここずっと世間を騒がせては振袖小町に倒されている謎の軍団がこんな近くに根城を作っていたことに驚きを隠せなかった。
「ですが、あれだけ世間を騒がせているように、相手は普通の人間ではありません。警察や自衛隊ではとても太刀打ちできません」
「なら振袖小町の出番ではないのか?」
その問いに、エリーは答えることができなかった。
「思うところはわかった。私に付いてきなさい」
かんなの父であり金丸ファウンデーション総帥、金丸宗房が腰を上げると、エリーとともにヘリコプターに乗り込み、ある研究施設に連れていく。彼によれば、この施設では振袖小町のこれまでの戦いのデータを研究し、そこから支援システムを極秘に開発していたというのだ。
「本橋、例のものはできているか?」
「あと少しで完成します。会長、こちらの方は?」
宗房はこのプロジェクトの主任で、エリーよりもわずかに年下と思われる女性研究員である本橋ひなたを彼女に紹介し、彼女の案内で研究施設の最奥部にある厳重なセキュリティがなされた部屋の前まで足を進める。
彼女の手でセキュリティが解除されると、その中は無数のランプが点滅した機械的な部屋であり、その中心部にはメカニカルながらも気品と美しさを兼ね備えた夜空のごとき藍色と黒が混ざったような色をしている着物ドレスが鎮座していた。
「これは……!?」
今まで知らされていない計画が水面下で動いていたことと、機械的かつこれまでに見たこともないほど美しい着物が目の前にあることに、エリーはまるで雷に打たれたような衝撃を受けた。
「私から説明させていただきます」
ひなたがこの着物ドレスが何か説明を始める。固唾をのんで一通り内容を聞いたエリーは、ある決意をした。
主任技術者となる若すぎる女性研究者も本来ならあまりいない。




