第拾漆幕の拾肆
話の通じない男が遂に一線を越える。
「さくら、今日は君と俺にとって特別な日になるんだ」
「ねえティーガー……もしかしてあなたって……」
以前耳にした彼とそっくりの少年の話や、たった今行われたプチッツァとのやり取りを通したさくらはある結論に辿り着き、その答えを聞こうとしたが、それがなされようとしたそのときだった。
一方のかんなとエリーも空中で互いの手を取り合うことはできたが、このまま重力に身を任せると命が危ないことを悟る。その直後、風が巻き起こり彼女たちを包み、安全に屋上に着地させる。かんなはこの風が起こる直前に緑色の翼がわずかにはためいていたのに気づき、まだ彼女の中には迷いがあると肌で感じた。
屋上に着地後、振袖のカケラを持つ者に対抗する力を持たぬ二人は、対話に持ち込もうとしていたのだが、平行線を辿ったままであった。
「やめろー!!」
ティーガーに向かって蓮が走り寄ってくる。彼にとっては最大の恋敵である彼の登場は、ここまでの理想的なシナリオに割り込んできた不協和音でしかなかった。
「水崎蓮……!!」
蓮に憎しみを込めた視線を浴びせたティーガーの右手の5本の指からは電撃でできた爪が伸びる。倒れているかりんやアイリス、満身創痍のあおいは新たな大詰めのお披露目を阻止したくても動けず、イナリが駆け寄って噛みつこうとしたが、それも左手であっさりと払いのけられてしまう。
「お前たちにいいものを見せてやる! 迅雷封裂!!」
電撃の爪が向けられた先は……!!!
「ぐあああっ!!!」
変身が解除され攻撃を防ぐことができないさくらの前に立ちふさがった蓮が身代わりとなる形で、彼の新たな大詰めを受ける形となった。
時間が止まる。それが比喩として使えるほどに衝撃的なことが目の前で起きる。これには屋上にいたかんなたちすらも苦悶の叫びが聞こえてきた方に思わず顔を向ける。遠くで見ていたラパンは、力を抜いてそっと拍手していた。
自分に大詰めが来ると思っていたところをかばわれてしまい、思わず目をつぶってしまったさくらは何が起こったのか目を開けようとするが、止めるためにあおいの声が響く。
「さくら! ダメ!!」
その声も空しく、さくらは目を開いてしまう。アイリスとかりんも表情に不安がよぎった。
「……よかった……」
蓮はさくらに一言告げた後、彼女の視界を塞ぐように手を顔に伸ばすも、塞ぐことはできずに寄り掛かるように倒れ、気絶する。彼のシャツは斜めに5本の大きな裂傷がつけられ、その下からは鮮血が流れていた。
さあ、どうなる!?




