第拾漆幕の拾壱
大人の都合でできた不都合の犠牲はいつも子どもたち。
ネガボットは未だにあおいとアイリスを苦戦させていた。後ろ脚だけで立ったかと思いきや、腹が開いて硬貨の形をした無数の弾が放たれじわじわと体力を消耗していく。ネガボットは豚ではなく豚型貯金箱を模していたのだ。
口にガムテープを貼られ、手首と足首を同じくガムテープでぐるぐる巻きにされた卯月を体育館の放送室で発見したかりんは逃げるように指示してから合流する。
仲間のもとへと走るかりんの背を見送ってから、ラパンはスマホを取り出してある人物へ連絡を取る。
「もしもし……?」
屋上では、フリージアで発生していた病巣が意外な形で明かされ、一同は開いた口が塞がらなかった。
「……とまあ、真相はこんな感じでした」
ふわふわと翼を羽ばたかせながら、プチッツァは語りを終える。その表情と語り口は絶望を帯びていた。
「……それ、あなたも悔しかったんじゃないの?」
さくらが口を開く。投げかけられた言葉にプチッツァは心底嫌そうな顔をしながら屋上に降り立って反論する。
「あんたに何がわかるの!? 今までなんの苦労もせず、生まれてからずっと良くしてくれる人たちに囲まれ続けて、大切な人を失ったことも、ましてやそう思っていた人から裏切られたことなんてあるわけないくせに!!」
この言葉に、矢も楯もたまらずエリーがプチッツァに駆け寄り、抱きしめる。彼女の体の冷たさに愕然としながらも、声をかける。
「ひかり……やっぱりそうだ。あなたは私と一緒にフリージアで育った鳥羽ひかり……だよね?」
高砂からされて嫌悪感しかなかった本当の名前を呼ばれるという行為をされても、不思議と嫌な気持ちがしなかったことにプチッツァは頭がこんがらがり、何も言えずそのままエリーに抱きしめられる。
「半年前の事故であなたとはもう二度と会えない、そう思っていた。今こうして会えているのがなぜかはわからない、あなたが幽霊でもなんでもいい。私はあなたに会えてうれしい。つらかったんだね、大変だったんだね」
エリーは涙を流しながらぎゅっとプチッツァ、もといひかりを強く抱きしめる。さくらにとってはこれまで何度も戦ってきた、かんなにとってはつい先日知り合ったばかりのこれから友達になるはずの相手が半年前に今立っている場所で事故に遭っていたことを知り二人の頭の中は矛盾が渦巻いていた。
「悪い奴の仲間なんてもうやめましょう、きっと振袖小町やみんなはあなたを許してくれるはず」
彼女が身に纏っているふんわりとしたクラシカルスタイルのメイド服の感触と、久々に感じた血の通っている人間の体温に温かさと懐かしさを覚えながらも、情をかなぐり捨てて乱暴にエリーを突き飛ばす。そして翼を出して浮かび上がる。エリーに代わり、怒りをむき出しにしたかんなが前に出る。
地上で繰り広げられていたネガボットとの戦いは消耗戦になっていた。どんなに攻撃しても途中で軌道が変わり背中に吸収され、腹から硬貨型の弾とともに攻撃した技が反射されていくからだ。
腹にある発射口をどうにかすることが先決だが、どうすればいいか……そこにかりんが打開策を思いつく。
もう会えない人に会えたことは悲喜こもごも。闇は取り払えるか。




