第拾漆幕の玖
オリエント・ゾディアックがどういう人物の集まりか、わかってきたかな?
「なに!?」
「ちょっと行ってくるから次郎くんは待ってて。先生、次郎くんのことお願いします」
小町部とエリーが駆けつけると、フリージアの職員が子どもたちを襲い、恐怖に泣き叫ぶという地獄絵図が繰り広げられていた。
「振袖小町……待ってたよ」
ステージに上がっていたのは卯月ではなくラパンだった。
「ラパン!」
「卯月ちゃんはどこ!?」
かりんの叫びに、ラパンは冷たく言い放つ。
「知らない」
その声にさくらとかりんはステージに向かい走るが、ギャラリーからプチッツァが飛び降りてくる。イナリは今までの彼女とは何かが違うことを雰囲気から感じ取っていた。
子どもたちを避難させようとしていたかんなとエリーは彼とともに現れた少女の顔を見て言葉を失う。
「(嘘、あの子……!)」
「(間違いない、あれは、半年前に死んだはずの、ひかり……!!)」
廃研究所の地下、カルネロの研究室。すでにプチッツァとティーガーの手によって大きく荒らされてしまっているが、それをさらに荒らす者が現れる。
「き……あ……い……」
新たに作ったアジトでカルネロは、自分の機材が壊されていくことを研究室が荒らされる光景が映し出される無感情に見つめていた。
「どんどん壊されちゃってるけどいいの!?」
心配するチュイをよそに、カルネロはつぶやく。
「なぁに、もうあそこに用はないんだ。重要なものは既に移してあるし、ここにも実験器具や機械はたくさんある。それに……実験は第二段階に移っているからね」
彼のアジトの別室では、石神、北沢、K2の3人が集められていた。彼らの招集理由は……アジトの掃除であった。
スカウトされたのだからすぐに力が手に入るかと思いきやの肩透かしで揃いも揃って明らかに不満そうな表情だった。石神は窓や床に雑巾がけをしていたが、雑巾を手にする手には不要な力が入っていた。
「まったく、なんで俺がこんなことを……」
「今日は予備校に行く予定があるのに……」
苛立ちから掃除機をかけながらぼやいていたK2に、不用品を捨てに行っていたところを戻ってきた北沢が怒号をあげる。
「予備校予備校って、お前は予備校教の信者か! 宗教の勧誘ならよそでやれ、興味ねーんだよ!!」
「なんだと? 俺は剣道やってるくせに根性のひん曲がってるお前なんかと違って学校で1位の成績を取っていい大学に行かなきゃならないんだよ!」
「あぁっ!? 言ってくれたな、この万年2位野郎!!」
彼にとっての禁句に近い言葉を吐きながら北沢がK2に殴りかかろうとしたとき、石神が止めに入る。
「まあまあ。俺たちは一応共通の敵がいるみたいだし、ここは仲良くしとこうぜ?」
敵の敵は味方。その理論で共闘を持ちかけていたところに、ボヴィーニがある人物を連れて戻ってくる。
「みんな、調子はどうかしら」
彼女の帰還に3人そろって背筋が伸びる。その姿に初々しさを感じたボヴィーニは小さく微笑んでいた。
「今日はみんなに新しい仲間を紹介するわ。入ってちょうだい」
部屋に松葉杖の音がこだまする。新しい仲間と称された人物の顔を見た3人は驚きを隠せなかった。
予備校に行かなきゃと口では言ってるのに掃除しに来てるのは真面目なんだかその逆かわかりにくい、モデルとなった人物同様矛盾した男である。




