表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第拾漆幕「邂逅」
PR
265/383

第拾漆幕の漆

道中も平和に行けるかな……?

 本番当日。伊吹神社で待ち合わせした小町部はエリーが運転するワンボックスに乗り込んでいく。

 桃香はエリーとはこの日が初対面、互いに自己紹介を済ませたが、部員たちや事情を知る百合からこれまでにも「かんなが大企業の令嬢である」という話を聞かされてはいたが何かの冗談であるとずっと思っていたため、事実だと知って驚きのあまり腰を抜かしてしまいその原因から心配されてしまった。

 桃香が助手席に座り、2列目には左からかんな、さくら、かりんが座り、3列目には左からあおい、蓮、アイリスが座った。イナリはケージの中に入れられ、さくらの足元に置かれ、出発した。

 その頃、翼を出して空が飛べるほどには体力を回復できたプチッツァは、伊吹神社のすぐそばにあるコンビニのごみ箱にマリトッツォの袋を捨ててから慣れ親しんだ翼を背中から出し、小町部が乗る車の尾行を開始する。

「(なかなかおいしかった。今度会えたら……お礼でも言うかな)」

 出発してしばらく経った頃、フリージアへと向かう車のハンドルを握るエリーから、神妙な語り口で話が始まる。

「皆さま、フリージアについてですが、半年前に悲しい事故があったことをご存知でしょうか」

 彼女によると、今から半年前にフリージアを退所予定だった「鳥羽ひかり」という名前の少女が、退所前日に屋上から飛び降りて自ら命を絶ったという。表向きには行方不明扱いになっているが、今は施設の屋上は立ち入り禁止となりフェンスの増設工事がされている最中だという。

「エリーさん、もしかしてうちのクラスの淡路さんってフリージアにいた?」

「淡路陽子のことでしょうか? それでしたら、おっしゃる通りです」

 フリージアという名前に前々から聞き覚えがあると思ったさくらは、お通夜ムードになってしまった空気を払拭すべく思い切って質問をしてみる。

「火宮さん、淡路さんと仲直りできたのね、よかった」

 桃香がほっとしていたように体育祭で一悶着があったさくらは陽子と和解できたことを語り、その際に彼女から体育祭で幽霊を見たと聞いたのだが、それが半年前に飛び降りて自殺した少女だったというのである。

 それ以後はお通夜ムードの重い空気などなかったかのように和気藹々と会話を進めていくが、昨日出会った少女のことが気にかかって仕方ないかんなはどこか上の空で、生返事や素っ頓狂な返答を連発し心配されていた。

「(お嬢様のこのご様子、何かあったのでは……? ハッ、もしや……!?)」

 無意識にハンドルを握る手に不必要な力が入り、運転が乱暴になる。乗っているさくらたちは突然の乗り心地の変化に動揺する。イナリが入っているケージは車内で転がり、必然的に彼の体も中で激しく回転し目を回す。

「(どこの馬の骨だか知りませんが一度顔を見ておく必要がありますね……)」

 この運転は目的地に到着するまで続き、駐車するために時速を下げて我に返ったエリーは自己嫌悪に陥る。もちろん、駐車が終わって合流した後に謝罪する羽目になったのは言うまでもない。

 お世辞にも安全とは言えない運転は同乗していた小町部一同だけでなく、尾行していたプチッツァにとっても災難であり、見失わずには済んだがまだ本調子ではない彼女からすればいつそうなってもおかしくないギリギリの追跡となった。

安全運転を心がけましょう。頭文字Dの真似は危険です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ