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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第拾漆幕「邂逅」
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第拾漆幕の陸

サブタイトル回収。

 フリージアへボランティアに行く前日。買い出しに出かけたかんなは一通り必要なものを買いそろえ、後は部室に戻るだけ……になったのだが、その帰り道に異様なうめき声が耳に入ってくる。

 不審に思ったがよく耳を澄ませると自分と同年代くらいの少女のものであると感じたかんなは、恐る恐る音がする方へと足を向ける。駐車場の前を通り過ぎ、袋小路を進んでいくと、その奥で一人の少女が今にも力尽きそうな表情でうつ伏せになって横たわっていた。

「……どしたの?」

 声をかけてきたかんなの顔を見て一瞬顔をしかめる彼女だが、すぐに顔をそらしてやり過ごす。

「あ、わかった! 秒でビニってくるから待ってて」

 彼女が言っていることがいまいちわからないが待っていればいいということはわかったためおとなしく待つことにした。

 すぐ近くにあるコンビニに向かったかんなは手短に買い物を済ませてから、彼女のもとに戻ってくる。

「(あ、そういうこと……)」

 言っている意味が分かったと同時に、腹の虫も鳴る。しかし今の彼女に持ち合わせなどなかったため差し出されても断ろうとするが、差し出した手にそのまま乗せられてしまう。

「これ超おいしいの! あとお金なら大丈夫、これあたしのおごりだから」

 そう言いながらかんなは買ってきたものと同じシュークリームをほおばる。

 見ず知らずの自分になぜここまでしてくれるのか全く分からず、怪訝そうにかんなを見つめる。しかし、目の前でおいしそうに食べられては嫌でもおいしそうだと感じ彼女を交互に目を向けていたが、かんなの方もなぜ彼女のことを知らないのにここまでしたのか自問自答していた。

「とにかく食べてみて。飛ぶから」

 飛ぶ。図らずもNGワードを言われてしまい、気を悪くしたプチッツァはシュークリームを食べずにそのまま持って去っていく。その背中に、漠然とではあったが彼女がどこか寂し気な思いを抱いているとかんなは感じた。

「「(……あ、名前聞いてなかった)」」

 疑問の答えが出ず気づいていなかったが、あとわずかで充電が切れそうになっていた彼女のスマホには連絡が入っていた。その送り主の名は……ラパン。

 明日の本番に向けて体力を温存すべく早めの解散となり、帰宅する一同。

 かんなはあざみ荘に帰ってくるが、今日もまた管理人の蓑輪が庭掃除をしていた。

「ただいまー」

「かんなちゃん、おかえんなさい。なんかいいことでもあったのかい?」

 朗らかな顔をした蓑輪に、かんなは少女を助けたことを無邪気に話す。

「あらそうかい。それなら、かんなちゃんにはいいことがあるよ。名前を聞けなかったのは、その機会が巡ってきてまた会えるからかもしれないよ」

 かんなは目を輝かせながら、不安定な足元に気をつけながら階段をのぼり、自分の部屋に足を進めていった。

 あれだけの大見得を切ってしまったがゆえに帰る場所を失い、吹き飛ばされた衝撃でMUJINAも壊れてしまい土地勘のない場所をあてもなくさまよっていたプチッツァは、空腹に耐えきれなくなりかんなにもらった……というより半ば強引に渡されたシュークリームの袋を開けて取り出し、口にする。

「……?」

 安価で買える何の変哲もないコンビニスイーツだったにもかかわらず、普段空腹を紛らわすために食べていた食事とは比べ物にならない温かみを感じていた。

コンビニスイーツもたまに食べるとうまい。

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