第拾漆幕の伍
悪の組織名物、内輪揉め。
翌日。廃研究所の前でプチッツァがロンたち他のメンバーと対峙していた。それを、ティーガーは2階の窓から高みの見物をしていた。事の始まりは、ロンによってかかった召集でプチッツァが他の出席者に対して自分が世界を創りかえることを宣言、それに伴いこれまで対等だった関係を自分との主従に切り替えることを強制したことからだった。
「おい、お前どうかしちまったのか!? なら俺の毒で目ぇ覚まさせてやる!!」
「てめえの下でへこへこするなんざまっぴらごめんだ!」
「そういうビッグマウスはもっと人生経験を積んでからにしなさいな」
「不本意ながら、私もキマと同意見です」
ロンだけは何も言わずに怒り心頭、5人もの相手を前にしてもプチッツァは全くひるんでいなかった。
「しょうがないなぁ。じゃあ皆さんにお披露目してあげる」
飛び上がったプチッツァは、バルコニーに降り立ち、元の翼をしまってから青、黄色、緑の羽を次々に披露する。それは以前ティーガーに出して見せた時よりも色が濃くなっていた。変化した翼の色を見てティーガーは目を見開く。
「どんな仕掛けか知らねえが、その翼もぎ取って手羽先にしてやる!! 一気当千!!」
ゴーダが懐に隠していた缶チューハイを一気飲みしてから大詰めを発動し、プチッツァがいるバルコニーに向かってジャンプする。だが、あざ笑うかのようにさらに高く飛び上がった彼女は、空中で青の羽の力を使い氷柱の雨を空中にいるゴーダに降らせる。氷柱が直撃したゴーダは背中から勢いよく庭に落下し、セルペンテとスキロスは度肝を抜かれる。
「あんたの大好きなお酒みたいにキンキンにしてあげた気分はどう?」
地上で倒れたゴーダは歯ぎしりをしながら、我が物顔で空を飛び回るプチッツァをにらみつける。
「なら私が! 護裏霧中!!」
スキロスはプチッツァに向けて掌から霧を放つ。しかし、元の翼を片方しまって代わりに緑の羽を出して突風を吹かせると、それを軽々と打ち消してみせる。そこから地上すれすれまで急降下し、その勢いを利用して彼に向けて木の葉が舞う強風を吹かせると、彼は空の果てまで飛んでいってしまう。
「こんなんじゃ復讐なんて何年かかっても無理……って聞こえないか」
再び上昇しようとした瞬間、彼女の脚をつかむ腕が現れる。スキロスを倒している間に彼は背後まで忍び寄っていたのだ。
「地上にいるならこっちのもんだ! くらえ! 精巧雨毒!!」
プチッツァの脚をつかんでいる彼の右手から毒が放たれる。しかし彼女は黄色の羽の力を使い掴まれた脚ごと石をぶつけて離脱、セルペンテの足元に黄色い羽根がふわりと落ちると彼の周りの地面だけみるみるうちに泥と化していき、ゆっくりと吞み込まれていく。
「昔何があったか知らないけど、それはこっちも同じなの」
空中で水の羽の力を使い解毒及び石を当てられた痛みを取ると、地上から水流と強風と大量の石が飛んでくる。
「手の内を見せた時点であんたの負けなのよ! 一目了然!!」
キマの大詰めは相手の技をコピーするもの。ここまでの技にある共通点を発見し、自らの記憶と照らし合わせて同じような能力を発揮したのだ。
「ふーん、これがほんとの猿真似ってやつ? でも……まだあったりして」
プチッツァの翼の色が漆黒に代わり、彼女の全身を包む。それが盾の役目を果たして水流、強風、石の全てを弾き返す。
「お返し。彩色剣美!!」
今持つすべての翼を広げたプチッツァはまず羽根の雨を降らす。それは以前振袖小町に向けて放ったものとは違い黒、青、黄、緑の四色であった。
黒の羽根は依然と同様に金属を彷彿とさせる鋭利さを持っていたがそれがさらに強化され、水の羽根は氷でできているかのように冷気を発し、黄色の羽根は落下するにつれて石のように硬化していき、緑の羽根は一つ一つが木の葉を巻き込んだ風を放っていた。
標的であったキマはもちろん、なんとか起き上がろうとしていたゴーダや地面から手だけ出ているセルペンテもこれらの巻き添えを食らい揃ってダウン。しかしロンだけは鞘に収められた刀ですべて弾き返し、無傷のままその場に佇んでいた。
「ロン、あんたの指図はもう聞かないから。疾風黙雨!!」
降下すると同時に翼を硬質化させ、翼でロンに斬りかかる。しかし、ロンは抜刀することなくかわしてやり過ごす。
「!? なんなの……あたしのことなめてんの!?」
激昂するプチッツァ。今の彼女には、ロンがある人物と重なって見えていた。
「なめてなどいない。ただ、今のお前には戦う価値などない、それだけだ」
自分を相手にしていないと言わんばかりの態度に業を煮やし、再び翼を広げる。
「ふざけないで!! 彩色剣美!!」
プチッツァが大詰めを放つために高く飛び上がろうとしたその瞬間、翼がすべて消失して失敗する。
その隙を見逃さなかったキマがこれまでの腹いせと言わんばかりに竜巻を浴びせ、彼女がスキロスに対して行ったようにどこかへ吹き飛ばされていってしまった。
小競り合いが終わった頃、廃研究所内ではハンジールが目を覚ます。彼は何も言わず、地下にあるカルネロの研究室へと足を運んでいった。
幹部が横一列の組織でニューリーダー病を発症すると、危ないぞ。




