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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第壱幕「再誕」
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第壱幕の拾玖

最初の敵は倒せましたが、まだ第壱幕は続きます。

 突然の叫びに驚くイナリ。

「今度はなんだよ!」

「早くしないとMタミが始まっちゃう! 急いで帰らなきゃ!!」

 Mタミとは「ミュージック・ターミナル」の略であり、毎週金曜日の夜に生放送されているサングラスがトレードマークの司会者でおなじみの長寿音楽番組のことである。今日はその金曜日で、今回は現在巷で人気に火が付いているメジャーデビューしたてのアイドルが初登場で新曲を披露する、と先週の予告で言われていた。それが気になっていたさくらは、本来ならば帰宅して時間になったらそれを見よう、と思っていたのだ。

 急いでイナリをカバンに入れて家へと走り出すさくら。その途中、彼女と同い年くらいの眉目秀麗、という言葉がよく似合う少年とすれ違った。帰宅することに集中していたさくらはそのことに気づいていなかったが、彼は走り去っていくさくらを見て思わず足を止め、彼女の方を振り返ってひとり呟く。

「あの子は……! うん、間違いない……」

 自分の目を再確認してから、少年の止まっていた足が再び動き出す。彼はさくらとは逆方向へと歩みを進めた。

 これまでの人生で最も長い一日が終わり、自宅に着いたさくら。イナリはカバンから顔だけ出している。

「おかえり、さくら! キツネのことだったらおじいちゃんから聞いてるわ! それより、今すぐニュース見て! うちの地元、出てるわよ!」

 帰宅するや否や、母にせかされてTVのニュースを見るさくらと、カバンから出て彼女の後を追ってTVに向かうイナリ。その画面に映っていたものとは……!

「はい、現場の菊池です! 見てください、この可憐で華やかな戦いぶり! 昔話に出てくる振袖小町さながら、いえ、もうこれは本物の振袖小町が現代に現れたと言っても差し支えのない活躍でしょう!! 私たちは彼女の活躍にこれからも密着していきますので、乞うご期待です!! 以上、現場から菊池でした!!」

 どこからどう見ても、さっき戦っていた自分だった。機内から力説するレポーターである菊池比奈からの大絶賛、ここまでの称賛を受けている人物がまさか自分であるとは言えるはずもなく、さくらとイナリはただ呆然とTVの前に立ち尽くすことしかできなかった。言うまでもないが、このニュースが嫌でも頭に残ってしまったおかげでニュース番組の後に放送された楽しみにしていたはずのMタミでの謎の新アイドルのデビューも、見ること自体はできたが内容がこれっぽっちも入ることなく本日分の放送が終了したのであった。

 同じく水崎家でも、火宮家と同じニュースを見ていた。あおいと蓮は自分たちを助けてくれた「幼いころから見覚えのある顔の人物」がTVに映っている光景に、口から出た感想が無意識にシンクロする。

「なあ、あれ……」

「やっぱり、そうだよね……」

「「どう見てもさくらだ……」」

 二人はそれぞれ本人に真実を尋ねるべきなのかと自問自答し、水崎家のリビングでは映像とともに気まずい空気が流れた。あおいの部屋ではニュースの映像に反応するかのようにハンガーにかけられていた彼女の制服の胸ポケットの中に入っている振袖のカケラがかすかに青く輝いていた。

第壱幕、これにて完結。第弐幕をお楽しみに。

もっとも、展開は読めてると思いますが。

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