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【連載版】俺、また馬に生まれました  作者: 猫のアミーゴ


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20/27

閑話 ジャンプの向こう側

俺の競走馬としての馬生は、可もなく不可もなくという感じであった。

デビューは3歳で、新馬戦こそ、勝てなかったが未勝利戦を2戦ほどで勝ち上がり、1勝クラスに上がった。

それからも勝ったり、負けたりを繰り返しながらオープンクラスまで上ることができた。

そこから先は厳しく、重賞には勝てず、一般オープンでは好走。

俺は6歳になった。最近では、オープンでも掲示板に載ることがない凡走が続いていた。

「ボーイを障害に転向させる」

馬主の意向もあり、俺と同じようにオープンを凡走していたアイツと一緒に障害の調教を受けることになった。

厄介払いされたように感じ、気が進まない俺と違って、あいつは目をきらきらさせていた。

「障害って何やるんだろう?高いジャンプって恰好いいよね」

ちょうど坊主スーやんが初めて俺を見たときの表情と被る。

その時の俺はぶすくれていたと思う。


やる気のない俺と違って、アイツは調教も一生懸命だった。

「ボーイ、上手く飛べたよー。」

いつの間にか、つられて競うように調教に参加してしまうようになった。

それも悪くない、と思えるようになってきた。

2頭とも無事、調教試験をクリアし、障害レースに出走するようになった。

初戦は散々だった。ゴールがどこにあるのかわからない。

他の馬が追い込みをかけられるのを見て、俺もアイツもあわてて走り出して、辛うじて後ろの方に滑り込んだ。

平地のレースのほうがよっぽど楽だと思った。

アイツは、「アチャー」って笑っていたな。

坊主が初戦の結果で落ち込む姿を見て、その時の記憶が蘇った。

「俺だって5戦かかった……」って余計なこといってしまったと思う。

まあ、坊主がやる気だしたから、よしとしたが、坊主は4戦目で障害勝ちやがった。

……きっと俺の指導がよかったはずだ。


アイツと俺は馬主が同じこともあって、よく一緒のレースに出ていた。

障害まで一緒にされるとは思わなかったが。

未勝利戦は同じレースに出ることも、違うレースに出ることもあったが、アイツも同じく5戦目で勝つことができた。

アイツの方が1日早かったのが、ちょっと悔しかった。

「スケジュールの都合で一日早くてよかったな」

俺は、憎まれ口を叩いた。

アイツは、「うん、ラッキーだった!!」って笑っていた。

能天気なアイツ。やる気がいまいちな俺。そして、自分に足りないものを補おうと必死な坊主。

坊主が一番に未勝利を抜けたのは、その差だろうな。


アイツはジャンプが好きだった。

竹柵ちくさくは固いブラシみたい。生垣いけがきはやわらかいブラシ!!」

アイツは、よくそんなことを言っていた。

「くすぐったくて、気持ちいい―!!」

すごくきれいなフォームだった。

俺は、飛び越せればいいぐらいの気持ちだった。


ついアイツの口癖を坊主に教えたせいか、坊主も障害をブラシで例えるようになった。

坊主がなぜレースの途中に竹柵が増えるのかと聞いてきたときは、ちょっと焦った。

実は考えたこともなかったのだが、坊主は竹が生えてきていると主張した。

ありえないだろうと思ったが、思わずコースを見てしまった。

竹が生えてくるなら、今頃コースは竹林になってるだろうに。


オープンに上がって、アイツと同じレースに出走することが多くなった。

どっちが先着するか、競っていたな。

俺は負け越していた。


坊主が今日、空馬がいたときの対処を聞いてきた。

あの日、アイツと俺は同じレースを走っていた。

ジャンプでは、負けてもスピードは俺の方に分がある。

俺はアイツの前を走っていた。今日は俺が勝つとその時までは考えていたんだ。

前の馬が障害でバランスを崩した。俺はとっさに避けようとした。

俺だけじゃない。近くにいた馬が皆、避けるのに必死だった。

そのせいでアイツの進路が完全にふさがった―――。

怒号と悲鳴が聞こえた。

「ボーイ、先行っててー。」

その中でアイツの能天気な声が聞こえたのを覚えている。

俺は振り返らなかった。

怖かったのだ。きっと振り返ったら走れなくなる。

俺は逃げた。気づいたらゴール板を過ぎていた。

後ろにアイツがいることを願って、俺は振り向いた。

アイツはコースのどこにもいなかった。もう、搬送されたのだろうか。

きっと厩舎に戻れば、

「ちょっと失敗しちゃった」

そう言ってアイツが笑っているんじゃないかと期待した。

アイツは、どこにもいなかった。

いつまでたっても戻ってこなかった。

坊主には、そんな経験させたくない。

『全人馬共に無事に飛越』俺は強く願う。



厩舎へ向かう道すがら、

「おーい、ボーイ」

アイツの能天気な声が聞こえた気がした。

……

「ボーイだよねぇー。ボーイ」

……!!

アイツがいた!?

「お、お前どうしてたんだ?」

「あー、いまね。馬術競技馬やってるー」

……無事だった。よかった。

「あれー、ボーイ泣いてるの?」

「汗だ!汗!!」

あのレースの日、怪我の治療を受けて、そのままリハビリセンターに移動したことを聞いた。そこで馬術競技馬になったらしい。

「走るより、ジャンプすることが多くて、今が楽しい」

アイツは、初めて障害の調教を受けたときと同じ顔をしていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


面白かったと思っていただけたら、☆をポチッとしてもらえると嬉しいです。


スーやんには内緒でお願いします。

本人は☆よりリンゴを要求すると思うので。

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