第15話 今度は迷わないよ
暖かいと暑いの間のような気候になってきた。
エースは順調に重賞を勝ち抜いたが、G1では3着だったらしい。
夏のグランプリは人気投票だって、エースは、堂々の2位で出走する予定らしい。
カイザーの時は何位だったんだろうか。記憶にないってことはカイザー人気なかったのかなぁ。
俺はあんちゃんに「まだ走りたいアピール」を繰り返す。
前回のレースで、俺はあんちゃんを信じなかった。
だから負けた。
障害レースは、平地のレースと違う。
同じ競馬場でも、走る場所が変わることがある。
最初はなかったのに、途中から竹が生えてきて、障害が増えることだってある。
だから、騎手を信じて走るには、いつGOサインが出ても走れるスタミナが必要なんだ。
俺、いつでもあんちゃんの指示で走れるようになるよ。
ムキムキマッチョになる!!
練習用コースを2周走ったら、以前は余裕がなかったけど、最近は大丈夫。
眠さに負けて、演技の練習をサボっていたけど、再開したよ。
芸は身を助けるっていうもんね。
あんちゃんに3周目のおねだりだ。
「スーやん、元気だね」
あんちゃんは、俺に騎乗して再びコースに向かってくれる。
ボーイも誘ってみたけど、
「付き合ってられん」
って断られた。
ボーイにも、いつか追いついてみせるよ。
特訓の成果、でてるかなぁ。
今日のメンツに知り合いはいるかな?
パドックに向かう。
だんだんとレースのメンバーは固定化していく。
カイザーの時は、一緒に走った馬のこと全然覚えなかった。
今は、顔見知りがいると、ちょっとうれしい。
みんなで『全人馬共に無事に飛越』を目指すぞ。
パドックが終わるとあんちゃんが駆け寄ってきた。
今日はあんちゃんの指示通りにいくよ。信じてるよ。
……道間違えないでね。
平地のレースの時は、コース全体を見てたけど、障害レースはどんな障害があるのかぐらいでいい。
竹が生えてくる予兆がないかだけ、しっかりチェック。
……何これ?
初めてみる巨大なバンケット、ステップ台がある。
コースにいきなりステージが出現したような形に、俺は二度見した。
どうやって攻略しようと考えている間にゲートに誘導されていく。
ガシャン。
あ―――!!出遅れた。俺は慌てて飛び出した。
最後方からのスタートになってしまった。
お客さんの目の前で出遅れちゃった。ちょっと恥ずかしいな。
気を取り直して、最初の生垣を飛ぶ、1つ、2つ、3つと連続ジャンプ。
コーナーに入っても障害がある。
忙しいな―。
俺は、タナカさん仕込みのジャンプで少しずつ順位を上げていく。
コーナーを抜けて、また連続ジャンプ。
スピードはもの足りない俺だけど、ジャンプは上達したんだ。
最後方だった俺は、ここまでで中団まで順位をあげた。
次のコーナーをまわると来た。
あのステージ台だ。台に上ったあと降りる位置に合わせないともたついてしまう。
前の集団にも、減速してくる馬がいる。
周囲に気を付けながら、台に飛び乗り、1歩2歩、飛び降りる。
よし。先頭集団に追いつけたぞ。
ほっとする間もなくコーナーに突入、再びジャンプ、スタート地点が見えてくる。
歓声があがる。連続して障害を飛ぶ。
俺の前は3頭。障害が多いから、チャンスが多い。出遅れを取り戻すぞ。
コーナーの障害を越えたあとは再び3つの連続障害、ここで2頭をかわす。
あんちゃんの指示で外側に向かう。
今度は迷わないよ。あのステージ台にいかないことで、ちょっとだけほっとする。
コーナーを回って、直線に向かう。そろそろかな?
固めブラシの障害を飛び越えると、あんちゃんからGOサインがでた。
俺は全力でスピードを上げる。俺の前には1頭。
ゴールまで距離がない。必死に走る。じりじりと距離が近づく。
俺が相手に追いついたのは、ゴール板を過ぎ去った後だった。
俺は2着だった。
検量室前で、おっさんが細長い形の飴をくれた。
悔しいけど、今日のレースは、しっかり手ごたえを感じた。
かりかり……!!
リンゴに飴がコーティングされている。
何これ! おいしい。
「リンゴ飴風に作ってみたんだけど、好きそうだね」
おっさんが、にこにこ笑ってる。
おっさんが、一番。
優勝だよぉ。
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本人は☆よりリンゴを要求すると思うので。




