第12話 4歳になりました
俺は4歳になった。
おっさんが「お年玉だよ」って、あのリンゴ味の飴をくれた。
今日は調教はお休みみたい。
昨日からあんちゃんもいない。実家に帰ったらしい。
あんちゃんも放牧なのかな。エースみたいに丸くなって帰ってきたら重くなって困るなー。
こりこりと飴をかじる。
冬のグランプリレースを終えたエースは本来は放牧の予定だったらしいが、前科のせいで俺と同じく厩舎に居残りらしい。
調教はお休みだけど、朝のお散歩は日課だから出かける。
雪がちらちらと降ってくる。
同じくお散歩のボーイを見つけた。
「ボーイ、おはよう」
「おう。障害初勝利決めたらしいな。」
ボーイはちょっとだけ、ためてから
「いい先輩の指導に恵まれたから、こんなに早く勝てたんだからな」
と顎を上にそらしながら言い切った。
確かにボーイの指導が良かったんだろうな。
「障害は1勝してからが、本番だからな」
「ボーイはオープン級なんだよね。あと2勝したら追いつけるの?」
「……いや、障害は1勝した地点でオープン級だ」
「ボーイと同じ?一緒のレース走るの?」
「まだ、早い!!同じオープンでも俺は重賞しかでないからな。」
「俺は重賞にはでれないの?」
「……でれないことは、ないな」
ボーイの背中が見えてきたような気がして、俺はなんだかにやけてきた。
そろそろお散歩も終わりだ。
あんちゃん、いつ帰ってくるのかなぁ。
次の日、ダンボール箱を抱えたあんちゃんが厩舎に帰ってきた。
放牧もう終わったの?早いなぁ。ちゃんと休めたのかな。
「スーやん、家族からスーやんにって」
もしかしてリンゴ?!リンゴはやくはやく。
「調教が終わってからね」
じゃあ、調教行こう!そしてリンゴ!!
今日はノブさんはいない。久しぶりにあんちゃんと二人でコースを回った。
……あんちゃんのお土産はニンジンだった。
俺があんまりにもしょんぼりしていたからか、見かねたおっさんが、リンゴ味の飴をくれた。
おっさん大好きー。
それからノブさんが調教に来る日が極端に減っていった。
ノブさんがボーイの騎手と一緒にやってきた。
あんちゃんの元気がない。おなかでも痛いのかな。
「今日は田中さんが騎乗するよ。スーやん」
あんちゃん調子悪いなら今日は厩舎に帰りなよ。
俺はあんちゃんを鼻先でつつく。
「スーやん……」
あんちゃんが俺の顔にしがみついてきた。そんなにおなか痛いの?
「アキくん」
ノブさんがあんちゃんに声をかける。
あんちゃんは、つらそうに田中さんに俺の手綱を渡した。
俺はちょっと心配になって、あんちゃんを振り返る。
「スーやん……」
「藤井、気持ちはわかるが、今回は先生の判断だ。」
センセイ、あんちゃん体調悪いなら休ませてあげてよ。
あんちゃん、俺、今日はノブさんとタナカさんと調教頑張るから休んでてね。
今日はタナカさんと一緒に調教を頑張った。
それからほぼ毎日タナカさんが調教にやってくるようになった。
タナカさんは、いつも飴をくれる。リンゴ味じゃない。
かりかり……甘いけど物足りない。
障害初勝利から初めてのレースの日がやってきた。
パドックで顔見知りを見かける。以前未勝利で一緒に走ったことがある馬がいる。
オープンになるから、手ごわくなるのかなぁ。でもちょっとだけわくわくした。
ノブさんが駆け寄ってくる。
あれ?あれ?あれ?
ノブさんは俺じゃない馬に騎乗した。俺にはタナカさんが騎乗する。
そっかぁ……。
マルの顔が思い浮かんだ。
ノブさん、今日はライバルなんだね。




