第9話 障害2戦目
いつになったら涼しくなるんだろう。
ぷくぷくだったエースは、ふっくらぐらいに戻ってきた。
近々レースに出走するらしい。重賞だって。大丈夫かなぁ。
前世の俺も、同じレースに出たような気がする。
障害の初戦では、まさか2周走るなんて思わなかった。
しかも2周目には、いつの間にか障害が増えている。
竹ってこんなに早く成長するの???
もう二度と油断しない。
3周走る気でいくぞ――――。
……って、きつい。
最近は調教で2周走るようになった。
スタミナついてきたかも。ムキムキになれるかなぁ。
1周のときは余裕だったボーイも、2周になるとちょっとしんどそうだ。
「年だよね?」
そう言ったら、噛みつかれそうになった。
先輩、すみません。調子に乗りました。
いつもはノブさんが乗るけど、たまにあんちゃんが乗る。
ノブさんには絶対的な安心感があるんだけど、あんちゃんだとちょっと不安になってくる。
だけど俺、もう飛べることはわかってるから、大丈夫!
いよいよ障害レースの2戦目の日がやってきた。
特訓の成果を出すときだ!俺は気合を入れた。
ノブさんを背に今から走るコースをじっくり見て回る。
竹の芽が出てないか要チェックだ。
先っぽがやわらかブラシの生垣が3つ、竹柵が1つ。
砂のところと芝のところ、ノブさんが境目をよく見るように促してくる。
今のところ生えてきそうなところは見当たらない。
あとバンケット、高低差がかなりある谷みたいなのが2つ。きつそうだなぁ。
ひととおり見た後はスタート地点へ向かう。
俺は竹が生えかけてないかもう一度振り返ってみた。
ボーイに言われたけど、障害はスタートダッシュせずに落ち着いてスタートするのがマナーらしい。
ささやき作戦は封印だ。あ、掛かったフリもみんなを心配させるから封印ね。
それはいつか平地走ることになったときまで温存することにする。
がしゃん。ゲートから慌てずに飛び出す。
砂地から芝へ、しばらく障害はない。ここで位置取り、スタートが良かったのか前の方に行けた。
コーナーの途中に生垣がある。ちょっと威圧感があるけどボーイ曰く、上の先っぽはやわらかブラシ。
ちょっとだけ高めにジャンプしていく。
直線に入ると歓声があがる。前世の時の音より、静かだな。
やわらかブラシと固めブラシの障害を続けて飛んでいく。
前回のレースより固めブラシがもっと固い。超固めブラシと呼んじゃおう。
次のカーブは障害なし、竹生えてない。よし。
カーブを抜けると一気に下って上る谷だ。きっつい。
俺だけじゃない、みんなきつそうだ。
谷を上ったら、すぐにやわらかブラシが出現する。
飛んだら、また深い谷だ。今、俺は3番目ぐらいかな。
前後の間が体ひとつ分ぐらい空いている。これぐらいのほうが安心して走れる。
砂のほうにいかないってことは、やっぱり1周じゃないんだな。
今日は取り乱さないぞ。最初の生垣を再び飛ぶ。
観客前の生垣、竹柵、竹柵……いっこ増えてる!竹生えてる!!
いきなり増える竹を飛び越え、カーブを回って、再び谷。
ちょっと疲れてきたかも、バンケットで1頭にかわされてしまった。
登った直後の生垣も気合で飛び越える……ああ、またバンケットだ。
ちょっとだけくじけそうになった俺にノブさんの声が届く。
「これ越えたらゴールだよ。がんばれ、スーやん!がんばれ!」
うん、俺、頑張る。バンケットを力を込めて超えていく。
芝から砂地へ。
いつもより砂が重く感じる、上り坂がつらい。
でもみんなきついんだ。俺だけがきついんじゃない!!
俺は4着だった。
検量室前で、おっさんがリンゴをくれた。
今日のリンゴはきっと甘い……ってこれ酸っぱいよ。
明日の散歩は、晴れてるといいなぁ。




