第8話 初めての障害レース
放牧に行っていた親友エースが早々に帰ってきた。
エースは一回り大きくなって帰ってきた。……主に横に。
前世の俺はもっと長く牧場でリフレッシュしていた記憶がある。
無事障害試験を通過した俺は、今日、障害レースに出走するのだ。
パドックで俺は周りの馬を観察する。みんな歴戦という感じがする。
3歳の俺と同世代はいない。何話せばいいんだろうか。
パドックが終わり、ノブさんが駆け寄ってくる。今日のパートナーはノブさんだ。
絶対的な安心感がある。
ノブさんを背に今から走るコースをじっくり見て回る。
ゴールの位置、障害の位置を確認していく。
竹柵が4つ。試験より少ないな。未勝利だからかな?
ゲートに入り、俺はいつものように周りに聞こえるように話をしようとした。
誰も聞いてない。先輩はレースに集中してるんだね。
がしゃん。ゲートが開き、俺は飛び出した。ささやき作戦は失敗したけどスタートは苦手じゃない。
まあまあの出だしだった。
スタートから坂を上っていく。
上り坂の途中に竹柵が3つ、3回連続ジャンプだ。上りながらさらに高くジャンプってきつい。
固いブラシの障害だから、頭を低くしてぎりぎりの高さで飛ぶ。
そこからカーブに向かって下り坂、楽になるかと思いきや下りのカーブの途中にも竹柵があるのだ。
ちょっと斜めに飛ぶ。今先頭だから周りのジャンプ気にしなくていいからちょっとだけ楽だ。
あとは急坂を上ってゴールに向けて駆け抜けるだけ―――。
俺は先頭でゴール板を駆け抜けた。
障害で初勝利!!俺障害向いてるのかも!
……あれ?ノブさんはスピードをゆるめさせてくれない。
え?え?え?
後ろから追いつかれ、抜かれていく。
そのまま、下りつつスタート地点へ向かっていく。
え?え?え?
もう一周ってことなの?
ふたたび坂を上りながら3回連続ジャンプをする。
同じようにカーブの下り坂で再びジャンプ。さっきは先頭だったのに今は後ろからだ。
え?え?え?
ゴール前に向かう直線に先ほどまでなかった障害が出現している。
なんでなんでなんで―――!!
2つの障害を越えて、俺は息も絶え絶えにゴールした。
ゴールだよね?
今度はノブさんもスピードをゆるめさせてくれた。
初めてのシンガリ負けだった。前を走る馬からかなり離れている。
俺って障害もダメダメなのかなぁ。
「スーやん、よく頑張ったね。完走できてえらいよ」
ノブさんが負けたのにほめてくれた。
検量室前で、おっさんがリンゴをくれた。
このリンゴ酸っぱいよ……。
翌々日、朝の散歩も浮かない気分でおっさんに連れていかれる。
ボーイが近くにいた。
会いたくなかったなぁ。
「障害初戦で勝てる馬なんてほぼいない。そんなに甘くないぞ」
しょんぼり。
「俺だって5戦かかった……」
すっごく小さな声だった。
ボーイはそっぽを向いて、俺から離れていった。
馬房に戻ると、おっさんがリンゴをくれた。
酸っぱいリンゴだったけど、うまい……気がした。
やっぱり酸っぱい。気のせいだね。




