石炭炭鉱を復活せよ①
第19話 石炭炭鉱を復活せよ①
炭鉱を復活させる。
そのための最初の一手は――運搬だった。
ベルトコンベアは、社長自ら設計した。
重い石炭を運ぶため、モーターと減速ギアを組み込み、低速高トルク仕様にした。
軸受けは厚く、駆動部はすべて鉄のケースで密閉。
ガスが充満しても火花が外に出ない構造だ。
試験運転。
大量の岩を乗せる。
ゴウン……と低い音を立て、ベルトがゆっくり動き出す。
石が運ばれていく。
速度を上げる。
落ちない。滑らない。
「……よし。」
会心だった。
これを何本も坑道に並べれば、掘った石炭は一気に外へ出せる。
人力とは比べものにならない。
生産性は跳ね上がる。
◆
次は掘削機。
工場裏の試験場で、巨大な岩にドリルビットを当てる。
「回せ。」
スイッチが入る。
ギュイイイイイイイイイ!!
石が削れ、粉が舞う。
少年たちが歓声を上げる。
「すげぇ!!」
だが――
焦げ臭い。
次の瞬間、火花が散った。
「止めろ!!」
緊急停止。
ドリルを分解すると、モーターの電線が黒く焦げていた。
布巻き絶縁が焼け落ちている。
社長は黙って指で触れた。
(……甘かった。)
炭鉱は高温。粉塵。振動。
理屈だけでは持たない。
「裸銅線に布は駄目だな。」
もっと耐熱が必要だ。
ガラス管に銅線を通し、周囲にゴムを流し込む。
さらに不燃オイルを染み込ませた絹テープを何重にも巻く。
試作第二号。
硬い。重い。だが燃えない。
再テスト。
今度は煙が出ない。
「……いける。」
掘削機も、コンベアも、炭鉱仕様に耐えた。
◆
最後の壁は照明だった。
裸電球。
スイッチの入り切りでスパークが出る。
フィラメントは高温。
ガスがあれば一瞬で爆発だ。
LEDがあれば――と何度も思った。
だが、この世界に半導体はない。
「ならば、閉じ込める。」
電球を厚いガラス瓶に入れる。
継ぎ目をシール材で完全密閉。
さらに外側を鋼鉄ケースで覆う。
万一内部で爆発しても、外に炎は出ない構造。
試験室でガスを充満させて点灯。
……爆発しない。
内部で小さな閃光が走ったが、外は無傷。
「これで行く。」
◆
数日後。
宰相から正式な試運転許可が出た。
開発チームは装置一式を積み込み、蒸気トラックで炭鉱へ向かう。
ところが――
坂道で止まった。
「……押せっ!」
全員で押す。
上のトラックが下のトラックを牽引する。
蒸気は噴き出し、男たちは汗だく。
発明は完璧でも、輸送は未熟。
それでも進む。
炭鉱村が見えてきた。
――だが。
黒煙が、まだ上がっている。
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