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倒産中年社長、異世界で孤児達と逆転再生経営!  作者: 神永ちろる


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かつてマルペンを裏で潰した男、アークガイル

第16話 かつてマルペンを裏で潰した男、アークガイル


マルペン商会を裏から潰した男――

アークガイル。

その男が、初めて“焦っていた”。


「あの社長……また復活だと?」


新聞を握りしめる。


「王室御用達、新発明事業成功。」


グラスを床に叩きつけた。


ガシャン!


飛び散った酒が靴を濡らす。

だが、気にも留めない。


「ふざけるな……!」


最近では陛下直々の受注まで受けているという。

迂闊には手が出せない。

ならば――裏からだ。


あのギャング団を動かせばいい。

どうすれば奴らを乗せられる?

男は腕を組み、目を細めた。



手下を酒場へ向かわせ、接触を試みる。

だが――


「ソンブレロモネダ商会には手を出さねぇ。」


団長の答えは冷たかった。


「……理由は?」


「あそこはやめとけ。割に合わねぇ。」


交渉は決裂。


「くそっ……!」


あんな連中ですら手を引くのか。

先日の襲撃も、厳重な護衛に阻まれた。

屋敷は要塞のように警戒されている。


――さすがだ。


だが、まだ終わらん。

終わらせてなるものか。

男は、静かに笑った。

奴を嫌う貴族は多い。

金と権力を持ちながら、


あの男のやり方を「下品」と吐き捨てる連中だ。

――あれを使う。


「今度は……踊ってもらおうか。」



夜更け。


「ご注文の品をお届けに参りました。アークガイルと申します。」


門番は一瞬訝しんだが、その名を聞いた途端、顔色を変えた。


黒い馬車が、静かに門をくぐる。

屋敷の奥――応接間。

王都でも悪名高い享楽貴族、

ベルノア伯爵が待っていた。

脂ぎった指で杯を回しながら、男は笑う。


「……来たか。」


アークガイルは一礼する。

その背後には、一人の少女が立っていた。

伯爵の視線が、ゆっくりと少女へ向けられる。

値踏みするような、嫌な目だった。


「……悪くない。」


「お気に召したのでしたら、このまま置いていきます。」


「ふむ。」


しばしの沈黙。

やがて、袋の擦れる音が響いた。

取引は、それだけで済んだ。

アークガイルは金の重みを確かめると、ふと口を開く。


「しかし――これも長くは続きません。」


「なに?」


「最近、防犯の仕組みが広がっておりましてね。」


「例の男か。」


「はい。ヤマタニ男爵です。」


伯爵の眉がぴくりと動く。


「あの男がいる限り……“狩り”は難しくなるでしょう。」


沈黙。

やがて――


「おのれ……ヤマタニめ。」


低く、怒りが滲む。


「わしの楽しみを邪魔するとは……。」


アークガイルは深く頭を下げる。


「ご不便をおかけいたします。」


その口元は――わずかに歪んでいた。



屋敷を後にする。

黒い馬車が、夜の中を進む。


(これでいい)


善人は守る。

守れば守るほど――恨みを買う。


善意など、いくらでも刃に変えられる。


「今度こそ……終わらせる。」


男は、静かに笑った。

黒い馬車は、音もなく闇に溶けていく。


その夜。

ひとつの悪意が、確かに動き出していた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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