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倒産中年社長、異世界で孤児達と逆転再生経営!  作者: 神永ちろる


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臆病者の城

第15話 臆病者の城


「金持ちども、皆殺しだ!」


その文言は、王都中を震え上がらせた。

スターユニオン新聞の一面。


“ファイヤーエレメンタルギャング団”の名が、恐怖とともに広がる。


燃え上がる屋敷。

逃げ惑う人影。

そして――悲鳴。


商人襲撃。

一家惨殺。

放火。

火と血の匂いが、王都に漂っていた。



社長は、紙面を持つ手が震えていることに気づいた。

気づいた瞬間、余計に止まらなくなる。

怖い。


正直に――怖い。


「守る。」と言ってきた。


「皆を守る。」と胸を張った。


だが本当は――

喧嘩もろくにしたことのない男だ。


剣も握れない。

拳も振るえない。

守ると言いながら、

自分の手では何一つ守れない。


ただの臆病者。

少年警備隊に頼る?

孤児に家臣候補を出させる?


(情けない……。)



その日から社長は外出を控えた。

会議は屋敷で。

設計図は使いに持たせる。

商談もすべて室内。

まるで亀のように。


だが――

警備はやりやすくなった。

守る対象が動かない。

動線が固定される。

防御が組みやすい。


臆病は、結果的に合理的だった。



薄暗い酒場の奥。

ファイヤーエレメンタルギャング団の団長は、新聞を丸めた。


「ソンブレロモネダ商会は外す。」


部下が顔を上げる。


「なんでです?」


団長はしばらく黙り、酒をあおる。


「あの社長は善人だ。」


「善人だからですか?」


「違う。」


団長の目が鋭くなる。


「警備が厚い。少年警備隊、消防隊、護衛十人。屋敷から出てこねぇ。」


「あそこはやめとけ。割に合わねぇ。」


部下が苦笑する。


「それに――。」


団長は低く言った。


「俺も昔、孤児だった。」


空気が変わる。


「もしあの商会があったら、俺は真っ先に飛び込んでたかもしれねぇ。」


誰も何も言わない。


「だが――王都の成金貴族は別だ。」


団長の口元が歪む。


「燃やせ。」



屋敷。

社長は窓の外を見ていた。

夜の巡回をする少年警備隊の灯りが、遠くに揺れている。


(俺は、怖い。)


(だが――逃げるだけではいられない。)


守るために強くなる必要はない。

剣を振るえなくてもいい。

戦えなくてもいい。

だが――


考えることはできる。

仕組みを作ることはできる。

臆病でも、街は守れる。


社長は机に向かい、新たな紙を広げた。

そこに書いたのは――


サンブレロ防衛計画


・夜間通行証制度

・街門の設置

・見張り塔建設

・鐘による緊急連絡網

・消防隊と警備隊の統合訓練


震える手は、いつの間にか止まっていた。

臆病者は、考える。

勇者は前に出る。


だが臆病者は――


生き残るための仕組みを作る。

炎には、水を。

暴力には、壁を。

そして――人を守る仕組みを。


社長は深く息を吐いた。


「怖いな……。」


だがその目は、もう逃げていなかった。


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