気を取られていた
第14話 気を取られていた
サンブレロ村のことばかり考えていた。
煙を上げる工場。
子供たちの声が響く学校。
回り続ける蒸気機関。
整列する消防隊――
順調だ。
すべてが、うまく回り始めている。
だが――
自分が“貴族”であることを、忘れていた。
◆
その時だった。
妙に静かだ。
森の音が、消えている。
次の瞬間――
馬車が急停止した。
「どうした?」
「危険です。強盗です!」
「中に!」
御者の少年の声が震える。
外で怒号。
ガード二名が飛び出す。
剣戟の音。
金属がぶつかり合う音が、すぐ近くで響く。
だが――
「ガード付きか、ちっ。」
相手は様子を見ると、すぐ退いた。
足音が遠ざかる。
逃走。
静寂。
社長は、自分の手が冷えていることに気づいた。
(俺が……狙われた?)
◆
現実。
貴族は守られる存在ではない。
守る側だ。
屋敷。
家族。
領地。
工場。
すべてが標的になる。
社長は急いで商人協会に依頼し、護衛を十人雇った。
だが――
◆
数日後。
スターユニオン新聞、一面。
ギャング団暗躍。
商人一家襲撃、全滅。
焼け落ちた屋敷。
黒く焦げた壁。
そして――静まり返った庭。
空気が変わった。
これは、ただの強盗ではない。
組織的だ。
◆
社長は孤児院へ向かった。
少年警備隊の訓練を見る。
まだ幼い。
だが、その目には意志が宿り始めている。
社長は、静かに口を開いた。
「選抜を行う。」
ざわめきが走る。
「家臣候補だ。」
空気が変わった。
少年たちの目が変わる。
守られる側から――守る側へ。
その覚悟が、そこに生まれる。
だが――
(俺は……この子たちを戦わせるのか。)
胸の奥が、重く沈む。
逃げたい。
だが、逃げれば守れない。
社長は、目を閉じ――
そして、開いた。
(……違う。)
戦わせるんじゃない。
守るための“仕組み”を与えるんだ。
そのために――
社長は、目を逸らさなかった。
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