少女
第12話 少女
孤児院で十二歳。
卒業の日。
少女は胸を張って社長室の前に立った。
ノック。
「入りなさい。」
「社長のために、なんでもやります。働かせてください。」
まっすぐな目だった。
社長はしばらく観察する。
「販売をやってみるか?」
計算、接客想定――
結果。
不合格。
「万年筆工場は?」
細かい組み立て試験。
これも不合格。
少女は肩を落とす。
「……すみません。」
社長は腕を組む。
「何か得意なものは?」
「お弾きなら得意です。」
思わず社長は吹き出した。
「他には?」
「お茶を淹れるのは得意です。」
「ほう。」
少し考える。
そして言った。
「秘書見習いをやってみるか。」
「え?」
「お茶汲みと、書類運び。まずはそこからだ。」
少女の顔がぱっと明るくなる。
試されるお茶
少女は丁寧に茶を淹れた。
湯温を見て、蒸らし時間を数え、静かに差し出す。
社長は黙って飲む。
一口。
二口。
無言。
少女は緊張する。
「……どうですか?」
社長はカップを置いた。
「俺は感想を言わん。」
「え?」
「誰かに正解を教えてもらう癖をつけるな。自分で考えろ。観察しろ。相手の顔を見ろ。」
少女ははっとする。
確かに、社長は全部飲んだ。
眉もひそめなかった。
「……はい。」
「秘書とはな、気遣いの仕事だ。俺が言う前に動く。俺が倒れる前に止める。」
少女は真剣な顔になる。
少女の野望
部屋を出たあと、小さく拳を握る。
(秘書になれば、社長の一番近くにいられる。)
少しだけ、頬が赤くなる。
(……お嫁さん、とか。)
だがすぐ首を振る。
(違う。まずは一人前だ。)
社長室の外で、少年助手と目が合う。
「新人か?」
「うん。秘書見習い。」
「大変だぞ。」
「負けないから。」
少女は胸を張る。
社長は室内で一人、微笑んでいた。
(計算も手先も駄目。だが、目がいい。)
人を見る目。
空気を読む目。
あれは磨けば光る。
「さて、どう育つか。」
商会は溢れかけている。
だからこそ、人材が要る。
少女の挑戦が、今始まった。
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