国王からの招待状
第8話 国王からの招待状
「大変でございます、旦那様!」
「なんだ朝から騒々しい……今日は休みだぞ。」
珍しく執事長が血相を変えている。
差し出された封筒には――王家の紋章。
社長は飲みかけの茶を吹いた。
「国王陛下より、五日後の茶会にご招待でございます。」
「……断れんのか?」
「断れません。」
即答だった。
「身なりを整え、ご出席ください。」
気が進まない。
だが逃げられない。
王城
なんだかんだで当日。
社長は発明品を携え、王城へと参上した。
磨き上げられた大理石の床。
高い天井。
無駄に広い空間。
(落ち着け……ただの商談だ。)
「この度はお招きいただき、誠に――」
「堅苦しい挨拶はよい。」
玉座から声が落ちる。
「普通にせよ。」
「……はい。」
余計に緊張する。
国王の視線が、隣に置かれた木箱へ向いた。
「それは?」
「最近の発明品でございます。」
ピンホールカメラ。
オルゴール。
万年筆。
社長は一つずつ説明した。
国王はオルゴールを手に取り、ゼンマイを回す。
澄んだ音色が広間に響く。
「ほほう……これが噂の品か。」
万年筆も試し書きする。
「羽根より扱いやすいな。」
社長は静かに息を吐いた。
第一関門突破。
本題
最高級の茶が出される。
香りが立つ。
(こんな茶、初めてだ……。)
国王が湯気越しに言う。
「呼んだのはな、話があるからだ。」
空気が変わる。
「男爵の発電所と蒸気トラックが欲しい。」
「……あれ、でございますか?」
「そうだ。大量にだ。」
社長の背筋が冷える。
(あれはまだ試作だぞ……。)
「正直に申します。大量生産は困難です。」
「費用は国が出す。」
即答。
「用途は?」
「新たな鉱山が発見された。運搬に、お前の“鉄の馬”が欲しい。」
なるほど。
軍事ではない。
資源開発だ。
「何台ご入用ですか?」
「まず十から二十。」
「……現状では、年に十台が限界です。」
国王の目が細くなる。
「どうすれば増える。」
社長の脳内で計算が走る。
人員。
設備。
鋳造ライン。
部品規格化。
「専用工場を設ければ……年百台は可能です。」
「それでよい。」
迷いがない。
「宰相と具体策を詰めよ。」
話は決まった。
帰路
金貨三百枚が下賜された。
ずっしりと重い。
馬車の中で、社長は天井を見つめる。
(専用ライン……百台……。)
サンブレロ村は、村ではなくなる。
街になる。
いや――工業都市だ。
胸の鼓動が収まらない。
その夜、社長はなかなか寝付けなかった。
蒸気の音が、頭の中で鳴り続けていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価【★★★★★】で応援していただけると嬉しいです!
すごく励みになります!




