サンブレロ発電所
第7話 サンブレロ発電所
蒸気エネルギーで最も重要なこと。
それは――熱を逃がさないこと。
だが、その答えは図面の上では見つからなかった。
ある日。
子供たちが、湯気の立つ茶碗を両手で包み込み、ふうふうと息を吹きかけながら飲んでいた。
「熱いねー!」
その何気ない光景を見た瞬間――
ヤマタニの目が見開かれる。
「……これだ。」
両手で包む。
外気を遮る。
熱を逃がさない。
つまり――
「釜と蒸気管を覆え。断熱層を作る。」
迷いはなかった。
改修
すぐさま工事が始まる。
ボイラーは二重壁構造へ。
蒸気管には断熱材を巻き付ける。
隙間という隙間を埋めていく。
建屋の中は、みるみる熱を帯びていった。
だが構わない。
外気温や風による出力低下さえ防げればいい。
成果
数日後。
圧力計の針が、ぴたりと止まった。
「回転数、安定!」
「出力……九十五パーセント!」
タービンが滑らかに回り続ける。
乱れはない。
止まらない。
そして――
「石炭の消費が減っています!」
どよめきが走る。
「燃費が上がっている……!」
熱が逃げなければ、無駄な燃焼は必要ない。
蒸気はついに――制御下に入った。
ヤマタニは小さく息を吐く。
「これで土台はできたな。」
その一言に、現場の空気が緩む。
代償
だが、代償もあった。
建屋は灼熱だった。
「暑っ……!」
作業員の額から汗が滝のように流れる。
ヤマタニはすぐに手を打つ。
塩気の強い漬物。
冷たい井戸水。
果実を絞った飲み物。
「倒れるなよ。お前らが倒れたら全部止まる。」
労働者たちは笑う。
「男爵様、前より顔が怖くなりましたぜ。」
「煤だ。」
短い返答に、どっと笑いが起きた。
重苦しかった空気が、少しだけ軽くなる。
黒字の兆し
万年筆は王都で評判になった。
オルゴールは貴族の子女に人気。
ピンホールカメラは物好きな商人が買い求める。
高価だ。
だが――売れる。
確実に。
帳簿を見た経理課長が、目を見開いた。
「借入金……予想より早く返済可能です。」
一瞬の静寂。
その意味を、全員が理解する。
ヤマタニは口元を歪めた。
「黒字が見えたな。」
その言葉に、誰もが顔を上げる。
もう“生き延びる”段階ではない。
ここからは――稼ぐ。
蒸気と光の村――サンブレロ。
その名は、いま王都に広がり始めている。
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FUNA先生が次読むリストに、この作品があると仰っていた。きゃ〜恥ずかしい。
下手くそな小説が見られちゃう。どうしよう…。




