光と闇
閑話 光と闇
その夜。
マクレガーは馬車に揺られ、屋敷へと戻る途中だった。
「マクレガー様、孤児が倒れてますぜ」
御者の声に、彼は窓の外へと目を向ける。
路地の片隅に、痩せ細った少年が倒れていた。
ぼろ布のような服。土に汚れた顔。今にも消え入りそうな呼吸。
「……こりゃ駄目だな」
一瞥しただけで、マクレガーは吐き捨てた。
「売り物にもならん。行け」
御者は一瞬だけ視線を落とすが、何も言わず手綱を打つ。
馬車は速度を落とすことなく、路地を通り過ぎた。
「マルペン商会も完全に潰れた」
マクレガーは満足げに笑う。
「帰って祝杯だ。ハッハッハ」
笑い声は、すぐに闇へと溶けた。
少年は、かすかに顔を上げる。
遠ざかる馬車へ向かって、震える手を伸ばした。
だが――声は出ない。
やがて馬車は闇の向こうへ消えた。
それでも少年は、しばらくその方向を見つめ続けていた。
◆
その頃。
ヤマタニは協会からの帰り道にあった。
用事はすでに終わっている。
あとは帰って、遅い食事でもとるだけ――
「あなた、あの路地に誰か倒れています!」
ケイトが窓の外を指差した。
ヒラリーも身を乗り出す。
「子供です!」
――その瞬間だった。
ヤマタニは、考えるより先に動いていた。
馬車が止まりきる前に扉を開け、地面へ飛び降りる。
路地へ駆け込み、倒れている少年を抱き起こした。
驚くほど軽い。
「まだ息がある……!」
すぐに抱え上げ、馬車へと戻る。
「急げ!」
少年を抱いたまま乗り込むと、御者は即座に手綱を打った。
馬車は夜の街を――全速力で駆け抜けていった。
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これで第一部の話は全て完了となります。
お話を読んでくれた方々に、感謝いたします。
ありがとうございました。
明日からは第二部に続きます。
お話はさらに盛り上がってまいりますので、引き続き、よろしくお願いします。
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