子供達
第65話 子供達
社長はいっときは回復したが、また寝込んでいた。
しかし、外の騒ぎで目を覚ました。
やけに騒がしい。
起き上がろうとするが、身体が思うように動かない。
「旦那様。入ります」
執事長が静かに入ってくる。
「今、外に……」
「旦那様、まだ安静になさって下さい」
起き上がろうとした社長を、執事長が制した。
「どうかお休みを」
「外が騒がしいからな。ついな」
社長は苦笑する。
「外に、従業員の子供達がやって来ております。旦那様に会いたいと」
「……何人だ?」
「百人以上です」
「そんなにか」
思わず目を見開く。
「代表を数名、ここへ」
やがて連れて来られたのは――
ロウソク係長の少年、販売主任の少女、石鹸係長の少年だった。
部屋に入るなり、三人は社長に飛びついた。
「これ、お前達!旦那様はご病気だぞ!」
「よい」
社長は優しく受け止める。
子供達から話を聞いた。
社長が女と帝国へ逃げたという噂。
女を襲ったという噂。
商会の倒産。
そして――
「あの販売課長が、悪い噂を流してたんだ……」
やはり、あいつか。
「社長さん……」
少年が、ぎゅっと服を掴む。
一瞬、言葉を探すように俯き――
「社長さんがいなくなったら、俺たち……どうしたらいいか分かんなかったんだ……」
小さな声だった。
だが、それは胸に深く突き刺さる。
「でもな!」
別の少年が顔を上げる。
「工具も道具も、ちゃんと隠したんだ!」
「取られたらダメだって、みんなで守ったんだ!」
「……そうか」
社長は、ゆっくりと頷いた。
「それは大手柄だ」
一人ひとりの頭を、優しく撫でていく。
子供達はくすぐったそうに笑った。
その笑顔を見て――
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
「……ありがとう」
自然と、言葉がこぼれた。
「お前達が守ってくれたんだな」
子供達は、誇らしげに頷く。
社長は静かに息を吸い――
そして、はっきりと言った。
「今度は、俺がお前達を守る番だ」
その言葉に、子供達の顔がぱっと明るくなる。
「本当か!?」
「やったー!」
部屋の中に、明るい声が広がった。
「食べ物でも、困ったことでもいい。何でも言え」
社長はそう言って、もう一度頭を撫でた。
外では、まだ大勢の子供達が待っている。
そのざわめきは――
もう不安の音ではない。
未来へ向かう、希望の音だった。
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