後悔
第61話 後悔
書斎の外では、冷たい夜風が窓を叩いている。
だがその音さえ、祝福の拍手のように聞こえた。
震える男…
一方、町外れの小さな家。
販売課長は、寝台の上で布団にくるまっていた。
暗闇の中、目だけが見開いている。
「……やってしまった」
震える声が、布団の中に消える。
部屋の隅には麻袋。
中には金と書類。
通帳と印鑑。
社長の信用そのもの。
「俺は……」
歯を食いしばる。
脅された。
家族のことを匂わされた。
子供の帰り道を、知っているぞと。
だから仕方なかった。
仕方なかったんだ。
何度も、何度も繰り返す。
だが胸の奥の重みは消えない。
あの社長の顔が浮かぶ。
笑っていた。
怒鳴ったこともあったが、最後は必ず笑った。
「頼りにしてるぞ」
そう言われた夜。
酒を酌み交わした夜。
「……返さなきゃならない」
呟く。
だが、どの面下げて?
裏切り者の顔で?
布団をさらに深くかぶる。
だが震えは止まらない。
「家族のためだ……」
もう一度、言い訳を並べる。
…けれど。
その言葉が、自分自身を追い詰めていく。
闇の中で、男はただ震えていた。
祝杯の音も、笑い声も知らずに。
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