孤児院の灯
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第59話 孤児院の灯
商会が止まった日から、孤児院は静かになった。
大人たちはいた。
ドクターも、元講師も、絵描きも、料理人も、鍛冶屋も、木工職人も。
だが――
発明家はいなかった。
子どもたちは気づいている。
一番よく笑い、一番よく話し、一番よく未来を語っていた人がいないことを。
「社長は帰ってくるよね?」
誰かが聞く。
大人たちは一瞬、言葉を失う。
倒産処理の方法も分からない。
銀行への対応も分からない。
帳簿の読み方も怪しい。
できるのは、ただ一つ。
守ること。
「今日は講義だ。星の話をしよう。」
元講師が黒板に円を描く。
「色の混ぜ方を教えてやる。」
絵描きが筆を渡す。
「火の扱い方は慎重にな。」
鍛冶屋が小さな鉄片を持たせる。
ドクターは言う。
「怪我はするなよ。お前らは宝だからな。」
皆、自分の得意なことを教えた。
それしかできなかった。
大人が騒げば、子どもは泣く。
だから騒がない。
パンは自費で買った。
畑で育てた野菜を煮た。
鶏の卵を分け合った。
贅沢はない。
だが、灯は消さない。
夜、食堂の隅で小さな声がする。
「社長は帰ってくる。」
誰が言い出したのか分からない。
だが、その言葉は広がった。
疑心暗鬼に染まった大人の世界と違い、ここにはまだ、信頼が残っていた。
彼らは待った。
泣かずに。
怒らずに。
ただ、信じて。
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鬱病の一歩手前と診断されて今を生きている。
メンタルクリニックで木の絵を書いたり、精神分析をしていたが、自分はもともと明るい性格の様だ。




