ミカという少女と兄妹
第18話 ミカという少女と兄妹
先日、ミカという少女を助けた。
かなり衰弱しており、空腹や過労が重なっている様子だった。
その娘が意識を取り戻したのは三日後。
目を覚ました瞬間、ミカは周囲の制止も聞かずに叫んだ。
「はぐれた弟達がいるから探さないと!!」
そしてそのままベッドから飛び起きようとする。
「ミカちゃんはまだ安静にしてなきゃだめよ!」
助手が慌てて押さえ込む。
「弟さんはヤマタニ様が探してくれるから安心しなさい」
しかしミカは首を振り、今にも飛び出しそうな勢いで暴れる。
「今すぐ行かないと……!」
その様子を見て、ただ事ではないと誰もが感じた。
だがヤマタニも忙しい身だ。
すぐに動けるとは限らない。
仕方なくドクターに相談して対応してもらう。
「衰弱してるから、まずは安心させて安静にさせなさい。」
「弟さんの事は詳しい事情や特徴を聞いて、手の空いている者に探させよう。」
助手はミカから必死に話を聞き出し、特徴を書き留めた。
震える声で語られる弟達の姿に、時間の猶予がないことを思い知らされる。
だが、いざ人を集めようとしても、皆それぞれ仕事で手が空いていない。
そこで孤児院や学校に行き、理由を説明して先生や生徒にも探してもらう事になった。
「しかし見たこともない子供を探すのは一苦労だぞ。」
発明家メイソンは腕を組んで言う。
「それはそうだが、早く見つけないと餓死か、孤児刈りに遭うかも知れない。」
鉱物講師マルセルは明らかに焦っていた。
「子供の足なら、最後に別れた付近にまだいるかも知れないな。」
絵描きのカシムが言う。
意外とまともな事を言うので、他の者も思わず感心した。
三人はとりあえず、ミカが最後に弟達と別れた付近を探すことにした。
だが、付近にはそれらしい子供はいなかった。
裏路地を覗き、道行く人に声をかけるが、手がかりはない。
「ぼくはミカに会って、弟達の似顔絵を描いてくるよ。」
「おお。それは良い。職業にぴったりだな。」
「俺等は聞き込みだ。」
カシムは診療所へ戻り、二人はその場に残って聞き込みを続けた。
しかし数日前の話ということもあり、なかなか情報は得られない。
何度も同じ説明を繰り返し、首を横に振られるたびに焦りが増していく。
その間にも時間だけが過ぎていった。
生徒達も三人ほどでまとまり、近所を探していたが、やはり見つからない。
「どこに行ったんだ……。」
マルセルが苛立ち混じりに呟く。
それから一時間半ほど経った頃――
スケッチブックを抱えたカシムが、息を切らして戻ってきた。
「ハァ……ハァ……どうだ、いたか?」
二人は無言で首を振る。
「似顔絵は描けたか?」
「ああ。」
カシムはスケッチブックを開いて見せた。
そこには、特徴をよく捉えた子供達の似顔絵が描かれていた。
「流石絵描きだな。」
早速その似顔絵を使い、再び聞き込みを開始した。
すると――
通りかかったお年寄りが、橋の付近で見かけたと言う。
「たしか、この辺りだったと思うがのう。」
案内してもらい、急いで向かう。
だが――子供はいなかった。
「ここから、何処へ行ったんだろう?」
マルセルは辺りを見回しながら言った。
「そうだな……ミカという少女は空腹だったんだろうから、子供も空腹であまり動けないはずだ。」
メイソンは冷静に推理する。
「そうすると食べられる物を探したりしていたかも知れないな。」
マルセルは自分ならどうするかを考える。
食べられる草木、川の水、あるいは魚――。
そう考え、土手を降りて川の辺りを探し始めた。
カシムは似顔絵を持って周辺の人に聞き込みを続ける。
しかし有力な情報は得られない。
メイソンも立ち止まり、一考する。
(自分ならどうする……?)
周辺には川と川沿いの道、そして住宅が立ち並んでいた。
遠くには橋がかかっているのが見える。
(食べ物か、それとも――。)
ふと、別の可能性が浮かぶ。
(雨風をしのげる場所……。)
視線が橋へと向いた。
「あれだ!」
メイソンは走って橋の下に向かった。
薄暗いその場所に踏み込むと――
ムシロに包まった子供達が見つかる。
「いたぞ!」
かすかだが、まだ息があった。
慌てて皆に声をかけ、子供達を抱きかかえて診療所に駆け戻る。
「ドクター、何とか助けてやってくれ!」
「まぁ。とりあえずベッドに寝かせて温めてやりなさい。」
ドクターは脈を診たが、かなり弱いらしい。
ミカにも知らせ、兄妹を同じベッドに寝かせた。
「衰弱してるから、気がついたら水や麦粥でも食べさせてあげなさい。」
「あとは人肌で温めるのがいいかもしれん。」
「おーい助手くん。湯たんぽなかったか?」
――他に何か出来ないのか。
そう思いながらも、見守るしかなかった。
やがてヤマタニがやって来て、カシム、メイソン、マルセルを褒めた。
「よく見つけ出して救ってくれた。感謝する。」
ヤマタニは嬉しそうに三人に握手した。
一時は駄目だと思われた兄妹だったが、なんとか持ち直してくれた。
今では食事も出来る様になっている。
すべては――三人のお手柄だった。
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