再び街道に魔物出没し街道封鎖
第17話 再び街道に魔物出没し街道封鎖
前回の魔物使いによる街道封鎖から、しばらくの時が流れた。
ようやく平穏が戻ったかに思われたその矢先――
再び街道に魔物が出没し、通行不能になったとの報が入る。
ヤマタニ屋敷では、急遽対策会議が開かれていた。
「また魔物か……。」
「またですね……。」
「またかぁ……。」
重苦しい空気が部屋を満たす。誰もが、同じ事態の繰り返しに疲弊していた。
そんな中、ヤマタニだけが不敵に笑った。
「諸君。街道封鎖による経済的影響は――もはや大した問題ではない。」
一同の視線が一斉に集まる。
「……と言いますと?」
しびれを切らしたゴドールが問いかける。
ヤマタニは、わざと間を置いてから言った。
「水上輸送用蒸気外輪船が完成した。」
「おぉ……!」
場の空気が一変する。
「これで北や西の水路を使えば、街道に頼らずとも物流は回る。」
得意げに語るヤマタニ。
だが、すぐにその表情は引き締まった。
「――とはいえ、魔物の存在を放置するわけにはいかん。」
「騎士団で排除してほしい。」
「もしまた妨害工作が絡んでいるなら……カミルの策に任せる。」
前回の功績により、カミルへの信頼は確固たるものになっていた。
こうして、まずは騎士団が出動することとなる。
◆
翌日――
騎士団は再び問題の森へと到着した。
セシルとピケが斥候として先行し、森の中へと消える。
残りの騎士団は、緊張した面持ちで突入準備を整えていた。
今回、新参のベルナードの姿もある。
やがて斥候が戻ってきた。
「魔物使いの気配はありません。ですが――ゴブリンの巣が出来ています。」
「数は?」
「少なく見積もって五十……ですが、増えている可能性があります。」
ゴドールは短く頷いた。
「巣分けだろう。規模が大きくなる前に叩く。」
「騎士団のみで突入する!」
「おぉー!!」
号令と共に、騎士団は一斉に突撃した。
森の奥、巣穴周辺――
騎士たちは次々とゴブリンを斬り伏せていく。
奇襲は成功だった。
「ふっ、他愛ないな。」
わずかの間で、二十六匹を撃破。
だが――
「……まだ出てくるぞ!」
巣穴から、次々と新たなゴブリンが湧き出してくる。
その中には、明らかに格の違う個体――ホブゴブリンが混ざっていた。
「数が多すぎる!」
「これは……五十どころじゃない!」
状況は一変する。
押していたはずの戦線が、じりじりと押し返されていく。
「一旦引く! 撤退だ!」
ゴドールの判断は早かった。
騎士団は隊列を維持したまま後退する。
――結果として、それが被害ゼロという最良の撤退を生んだ。
だが。
それは同時に、「油断による敗北」でもあった。
◆
屋敷に戻った騎士団は、ヤマタニへ報告を行う。
「撤退は正しい判断だ。」
ヤマタニは静かに言った。
「一人も欠けていない。それが何より重要だ。」
「……しかし、自分の判断が甘かった。」
ゴドールは深く頭を下げる。
「騎士団は少数精鋭だ。一兵たりとも失うわけにはいかん。」
その言葉に、誰も反論はなかった。
そこへ――
「少しよろしいでしょうか。」
ベルナードが一歩前に出る。
「準備は必要ですが……自分一人で殲滅できます。」
場がざわつく。
「大言壮語だ!」
ゴドールが即座に制止する。
だがヤマタニは、興味深そうに笑った。
「……ほう。策があるのか?」
「はい。」
ベルナードは迷いなく答える。
その作戦は単純だった。
巣穴周辺を掃討し、
薪と松明で内部を燻し出し、
外に出た個体を各個撃破。
そして最後に――
火薬樽で巣穴ごと崩落させる。
「……やってみせろ。」
ヤマタニは即断した。
「ただし、俺も騎士団も同行する。」
「腕前は、直に見せてもらうぞ。」
「はっ!」
◆
再び、ゴブリンの巣へ。
ベルナードは一人、前へ出た。
その剣は――速かった。
迷いがなく、無駄がない。
次々とゴブリンを斬り伏せ、瞬く間に周囲を制圧する。
「……これは。」
ゴドールが思わず息を呑む。
「大したものだな。」
ヤマタニも感心した。
やがて薪と松明が投げ込まれる。
巣穴の中から、煙に燻されたゴブリンが飛び出してくる。
それを――
ベルナードは、一匹残らず斬り伏せた。
やがて動きが止まる。
静寂。
「今です。」
火薬樽に火が入る。
投下――
全員が岩陰へ退避する。
次の瞬間。
「ドォォォン!!」
地面が揺れ、巣穴が崩壊する。
土煙が舞い上がり、視界を覆った。
やがて煙が晴れる。
そこには、完全に崩れ落ちた巣の跡だけが残っていた。
「ご覧の通りです。」
ベルナードが芝居がかった一礼をする。
「見事だ。」
ヤマタニは素直に称賛した。
だが、その視線は別の方向にも向いていた。
「――そしてゴドール。よくやった。」
「……?」
ベルナードが首をかしげる。
ヤマタニは静かに言った。
「別の巣穴から逃げた個体もいた。」
「それを、騎士団に回り込ませて処理させた。」
ベルナードの表情が変わる。
「……それは。」
ゴドールが苦笑した。
「最初から、その可能性を読んで配置していたのは――。」
視線がヤマタニに集まる。
ヤマタニは、わずかに照れたように笑った。
しかし何故こんなに早く、大きなゴブリンの巣穴ができたんだろうか?カミルはそこが引っかかってならなかった……。
――まるで、誰かが“意図的に増やした”かのように。
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