ついに鉄道開通
第23話 鉄道開通
ヤマタニは炭鉱から、使われていない線路や枕木を譲り受けた。距離は短い。サンブレロ村から街まで、ほんの数キロの道のりだ。
しかし、資材を運び、軌道を敷設する作業は決して簡単ではない。
浮浪者たちを集め、手伝ってもらうことにした。彼らにとっても、働く意味と食事が手に入る楽しみは大きい。
「さあ、皆。線路を敷くぞ!」
蒸気トラックの一台を、ヤマタニは機関車に改造させた。村と街を結ぶ鉄道。人も物資も、ぐっと移動が容易になる。馬車の代わりになるのだ。
そして電信も作った。材料さえあれば、これは簡単にできた。電線を繋ぎ、ツー・トンの組み合わせで文字を送る。村から街、街から村へ、情報が行き交う。
道脇に線路を引いていく。資材運びが楽になるよう、あえて道沿いに敷設したのだ。数キロの距離なら、一か月もあれば開通できるだろう。
「これで、村と街の距離はずいぶん近くなるな。」
ヤマタニは独り言のように呟く。
電力も同じように、発電所から送電線で村まで供給する。照明や作業機械も稼働できるようになり、村人たちの生活は格段に便利になる。
浮浪者たちは笑顔で作業を手伝い、子供たちも小さな手で杭や小道具を運ぶ。村と街を結ぶ線路は、ただの鉄の道ではない。人と人を、生活と希望を繋ぐ“血管”のようなものだ。
ヤマタニはふと、風に揺れる木々を見上げた。葉の色がほんのり変わり始めている。儚くも美しいグラデーション。鉄と蒸気と汗の匂いの中で、それでも景色は変わらず、静かに美しかった。
――そして、開通の日。
簡素な駅に、人が集まっていた。
村人たち。浮浪者たち。子供たち。
誰もが、線路を見つめている。
「……本当に、走るのか?」
その呟きに、誰も答えられなかった。
ヤマタニは、ゆっくりと機関車に手を置く。
冷たい鉄の感触。
――ここまで来た。
「蒸気圧、上げろ。」
低い声で命じた。
弁が開かれる。
ゴォォォォ……ッ!!
白い蒸気が、空へと噴き上がった。
眠っていた鉄の塊が、息を吹き返す。
ギシ……ギシ……
車輪が、わずかに震える。
「……っ。」
誰もが息を呑んだ、その瞬間――
「――動いたぞ!!」
子供の叫びが、空気を裂いた。
鉄の車輪が、確かに回る。
ゆっくりと。だが確実に。
ガタン。
ガタン、ガタン――
振動が地面を伝い、人々の足元を揺らす。
列車は、進んでいる。
歓声が爆発した。
「すげぇ……!」
「本当に走ってる!」
「ヤマタニ様だ……!」
子供たちは線路の横を走り、大人たちは帽子を振り、浮浪者たちは涙を拭った。
それは、ただの鉄ではない。
飢えを越えた証。
働いた証。
生き直した証。
すべてを乗せて――列車は走る。
村へ。街へ。未来へ。
ヤマタニは、その光景を静かに見つめていた。
そして、小さく呟く。
「これで――終わりじゃない。」
視線は、すでにその先を見ている。
「ここから、始まる。」
汽笛が、空に響いた。
それはまるで――
新しい時代の、産声のようだった。
った。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価【★★★★★】で応援していただけると嬉しいです!
すごく励みになります!




