爵位とご褒美
第22話 爵位とご褒美
王城、謁見の間。
磨き上げられた白大理石の床に、赤い絨毯がまっすぐ玉座へと伸びている。
両脇には色とりどりの紋章を胸に付けた貴族たち。 その中央に、社長は立っていた。
場違いだと思ったことは、もうない。
玉座の前に進み出る。
王の声が、静かに響いた。
「サンブレロ村再生」
「蒸気トラック発明」
「蒸気トラック工場開業」
「潰れた炭鉱の復活」
「誘拐犯逮捕への貢献」
「炭鉱開発道具の発明」
一つ一つ読み上げられるたび、空気が張り詰める。 そして――
「発明の数々。国家を動かす原動力になるだろう。」
「予は国の貢献したそなたを賞賛する。」
「以上、多大な功績により、準男爵を男爵とする。」
一瞬の静寂。 次の瞬間、拍手。 だがそれは、綺麗に揃ったものではなかった。 賞賛の拍手。 そして、押し殺したどよめき。
「平民上がりが……。」
「また爵位を……。」
「調子に乗るな平民め。」
男爵。 それは名誉称号ではない。 れっきとした世襲貴族。 同じ貴族から見れば、既得権を脅かす存在だ。
だが社長は、周囲の視線などどうでもよかった。 増えた領地。 鉄道を敷ける距離。 広がる物流。 繋がる村々。
頭の中では、すでに路線図が引かれている。 さらに、侍従が金の盆を差し出した。
「発明および功績に対する褒美、金貨五百枚。」
重い。 ずっしりと重い。 前の世界で、資金繰りに追われ、頭を下げ続けた日々が脳裏をよぎる。
あのとき、こんな資金があれば―― いや。 今は違う。 守るものがある。 助けられる村がある。
「ありがたく拝領いたします。」
深く頭を下げる。 拍手が再び広がる。
今度は、少しだけ大きかった。 社長は顔を上げ、玉座を見た。 この力は、権威のためではない。 救うためだ。
鉄道を通す。
物流を広げる。
雇用を生む。
孤児を減らす。
困った人を助ける。
それができるなら、爵位など飾りにすぎない。
だが――
その飾りが、人を救えるなら。 それも悪くない。 謁見の間を出ると、秘書見習いが小声で言った。
「男爵様、おめでとうございます。」
社長は少し困ったように笑う。
「様はいらない。やることは山積みだ。」
窓の外に、王都が広がっている。
まだ闇は多い。
だが、光は広がり始めている。 あの娘の笑顔を忘れない。
救える命がある限り、止まらない。
そのひらめきが、 また一つ、世界を動かした。
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