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35話 それぞれの帰郷

 マルガと別れてから1週間が経った。

『シュトラウス』の騒動も一段落を迎えたようで、冒険者ギルドはいつもの風景を取り戻した。


 キース達は魔巣窟の森へと入り、アマゾネスの村へと立ち寄った。アマゾネスのリーダービアンカは大いに喜び、その日は宴となった。


 あれからキュプロスの襲撃はないという。アマゾネスの村は平和に満ちていた。



「リタ、少しはアマゾネスの村に戻ってこい。キースと一緒にいたい気持ちもわかるが、姉として、妹のことが心配だ」


「あーそうだね。少しの間、アマゾネスの村で休憩しようかな」


「リタが来てから、連戦が続いたからな。一休みしてもいいんじゃないか」


「キースがそう言うなら、そうするよ」



 リタはアマゾネスの村で一休みをすることになった。リタとはしばしお別れだ。

キースと双子とアルナは魔巣窟の森へ入って、火山を目指す。


 火山の手前にある獣人の里に着いた。里長のエメリヒに赤竜の卵を無事に取り戻したことを報告する。里長のエメリヒは大いに喜んで、獣人達も安堵した。


 獣人の隠れ里では、廃墟が取り除かれて、新しい小屋が建てられて、里は復興の気運で盛り上がっていた。



「スーラとウーラも獣人の里の復興を手伝ってくれないか。人手が足りないんだ。お前達が居てくれたら、復興もはかどる」



 里長のエメリヒが双子に頭を下げている。双子は複雑な顔をしてキースを見る。



「いいんじゃないか。たまには里帰りもいいもんだぞ。冒険をしたくなったらデリントンへ戻ってくればいいだけだ」


「「キースが言うならそうするね」」



 里長の指揮で今夜は獣人達も集まって、宴が設けられた。そして大いに盛り上がった。


 キースはアルナを見る。



「俺は火山の火口に行って、赤竜に特訓してもらうつもりだが、アルナはどうする?」


「私も世界樹のエルフの里を出てからずいぶん経つ。1度、里帰りしてこようと思うわ」


「アルナには助けられてばかりだったからな。エルフの秘術まで教えてもらって」


「キースと私は仲間だ。それはこれからも変わらない。1度、里を見て来るだけだ」


「わかった。気をつけてな」



 アルナは精霊魔法の飛翔を使って、空中に舞い上がると、世界樹の森へと飛んでいった。


 キースはワイバン一体の上に乗り、赤竜のいる火山の火口を目指す。

そしてワイバーンから降りて、赤竜の元へ駆け寄る。



「まだ、別れてから1週間しか経っていないではないか。我のことが恋しくなったか?」


「いや、この間の戦いはマルガがいないと勝てなかった。まだまだ俺は弱いと思った。だからマルガに特訓してもらおうと思ってやってきた。特訓相手を頼みたい」


「お安い御用じゃ。キースの相手ならいくらでもしてやろう」



 そう言って赤竜は立ち上がる。キースは剣を握って赤竜に向っていく。赤竜との特訓は苛烈を極めた。しかし赤竜の回復魔法で、キースの傷は回復される。


 適度に休憩を挟みながら赤竜との特訓が続いた。そして10日後に赤竜の鱗を数ミリだけ欠けさせることに成功する。

これは大きな進歩だ。

それに赤竜との戦いで、赤竜に攻められていたおかげで、キースの防御力が数段アップした。



「マルガ、ありがとう。少しレベルアップできたかもしれない。マルガのおかげだ」


「特訓したくなったら、いつでも来るとよい。キースなら大歓迎だ」


「それじゃあ、今回はここまでにして帰るよ」


「ウム」



 キースは赤竜に手を振って、ワイバーンに乗る。ワイバーンは空へ舞い上がると獣人の隠れ里まで送ってくれた。


 獣人の隠れ里に着くとスーラとウーラが駆け寄ってくる。



「特訓は終わったの。私達も里の復興を手伝っていたんだけど、冒険者のほうが性に合ってるって思ったよ」


「復興は随分と進んだのです。これからは冒険者に戻るのです」


「俺と一緒にデリントンへ戻るということか? 里長の許可は取っているんだろうな」


「「うん、大丈夫。許可は取ってあるから」」



 里長のエメリヒに挨拶をして、キースと双子は獣人の隠れ里を出て、魔巣窟の森へと入った。

アルナとリタがいなくなったので、3人での旅路だ。



「久しぶりの3人での冒険だね。キースと出会った時のことが懐かしい」


「そうなのです。初めは3人だけのパーティでした。懐かしいのです」



 双子と出会った頃のキースは『肉体強化』もできずに、西の森でEランク魔獣を狩っている

貧弱な冒険者だった。その頃を思い出す。



「今では魔巣窟の森も自由に旅できるんだから、キースも私達も成長したわね」


「そうなのです。私達も今ではBランク冒険者なのです」



 魔巣窟の森で、群れていないCランク魔獣を倒しながら、1週間の旅を続けた。

リュックをパンパンに膨らませて魔巣窟の森を出る。そして西の森を通って、デリントンへ向かう街道に出た。


 デリントンの壁門へ戻ると、いつもの警備兵がニコリと微笑んでいる。



「また、姿を見なかったが魔巣窟の森へ入っていたのか。もうお前達にとって魔巣窟の森は脅威ではないのだな。すごいな」


「そんなことないですよ。今でも警戒していないと危ないですから」



 壁門を潜ってデリントンの街へ入る。露天商のおじさん達がキース達に声をかけてくる。

『シュトラウス』の騒動の噂が広まっているようだ。



「あの忌々しい『シュトラウス』をやっつけてくれてありがとうな。あいつ等偉そうだったんだ」


「デリントンの街には冒険者ギルドがある。だから大派閥ギルドなんていらなかったんだよ」



 意外と『シュトラウス』のことを悪印象に思っている人が多いことに驚いた。

それまでは『シュトラウス』はデリントンの街に貢献しているギルドだと思っていたから。


 確かにデリントンには冒険者ギルドがある。

冒険者さえ揃えば、冒険者ギルドで事足りた。


 キースは恥ずかしくなって、足早に宿へと戻った。

双子もキースの腕に絡まって、一緒に宿に戻る。


 アルナとリタがいつ戻ってくるかわからない。宿の部屋はそのまま借りておくことにした。



「これからも毎日、冒険だね。もっと強くなって魔巣窟の森を制覇しましょうよ」


「そうですね。魔巣窟の森には、まだ沢山の魔獣達がいるのです」



 その言葉を聞いて、キースはもう一度初めから冒険者を始めるような気持ちになった。

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