33話 炎剣、ローランド
「そんな浅知恵は無駄さ。俺がなぜ『賢者』なのか考えてみろ。それは普通の人間よりも膨大な魔力量を持っているからだ」
「そんなことは理解している。しかし必ず底はある」
「その前にお前達を倒してしまえばいい『炎の礫』『氷結の礫』」
前衛にいたキース、リタ、アルナに対して『炎の礫』が迫る。そして後衛にいた双子に『氷結の礫』が迫ってきた。
慌てて回避する5人。
「後衛にいても攻撃されたら意味ないじゃん」
「そうなのです。それなら前衛にあがって、攻撃したほうがいいのです」
「待つんだ。奴に攻撃させればいい。それだけ魔力量を消費するはずだ」
キースは激高する双子に待てを指示を出した。
そして、キース、アルナ、リタの三人は『物理防御結界』に剣を振るい、蹴りを入れる。
「そんな攻撃は全く利かない。何度やっても無駄さ」
「クソッ、この『物理防御結界』をどうにかできないのか」
「もう見ていられぬわ」
夜空から声が聞こえてきて、マルガが降りてきた。
「我に任せるがよい」
そう言って、両手を前に出して、マルガが構えると、両手から炎のブレスが吐き出された。
「これはいかん。『物理防御結界』『魔法防御結界』」
炎のブレスが『物理防御結界』『魔法防御結界』を打ちつける。
それでもハンヒェンの結界を破壊することはできない。
マルガは地上に着地し、キースの隣に立つとニヤリと笑う。
「では、これはどうじゃ」
マルガが右手を大きく振って結界に、右手を振るう。それだけで今までビクともしなかった
『物理防御結界』が揺れた。そしてビキビキと音を立ててヒビが入る。
さすがSランク魔獣、赤竜の攻撃を受けきれないらしい。
「これはいけませんね。『二重物理防御結界』」
新たにハンヒェンが『二重物理防御結界』を張った。すると防御結界のヒビが修復される。
「では、これでどうじゃ」
マルガが『二重物理防御結界』に蹴りを入れる。するとパキンと音を立てて『二重物理防御結界』が粉々に砕け散った。
「今だ。全員で集中攻撃だ」
「「わかったわ!」」
アルナが剣の平でハンヒェンを袈裟切りにした。そしてリタが回し蹴りでハンヒェンの頭を蹴りあげる。そしてスーラとウーラが駆け走り様に横薙ぎに一閃した。
ハンヒェンは何も言えずに、その場に倒れた。それをアルナが回復魔法で傷を癒していく。
「危ない所を助かったよ、マルガ」
「そもそも、我が頼んだ用件だからな。ただ待っているだけは性に合わん」
「あれ? 三人共、倒されてしまったのか?」
キース達が後方を見るとローランドが剣を抜いて歩いてくる。
「あの弱かったキースが大したもんだ。もうこの位でやめておかないか? 俺を倒すことはできないぞ」
「ローランド! お前を倒して卵のありかを吐いてもらう!」
「お前もしつこい奴だな。それは極秘事項だ」
キースは剣を構える。ローランドも剣を構えた。するとローランドの剣から炎が舞い上がる。
「俺の剣は炎剣だ。この世の斬れぬモノはない」
キースは魔力を限界突破するまで循環させて『肉体強化』を練り上げる。キースの体から炎のようなオーラがたちのぼる。
「ほう……それはエルフの秘術『肉体強化』じゃないか。それも練度が高い」
キースは逆袈裟にローランドの体へ剣を振るう。ローランドは一歩引いてキースの剣を躱すと、袈裟切りの剣を振るう。キースは半歩横に身体をズラして、ローランドの剣を避けた。
キースとローランドの攻防は続く。しかし2人共、体に剣を掠らせない。
「ほう……剣術も達人級になったか。よく訓練された剣だ」
ローランドは剣を振りながら、余裕の笑みを浮かべた。
キースには余裕などない。
ローランドの剣は鋭く、上段から振り下ろされる。
たまらずキースは体をズラしながら、剣で受け流そうとするが、キースの剣が溶けてしまった。
剣を失ったが寸でのところでキースはローランドの剣を避けた。
「キース、この剣を使って!」
そう言ってアルナが自分の剣をキースに放る。キースはそれをキャッチして、剣を構え直す。
「だから言っただろう。俺に斬れぬモノはないと」
「触れただけで剣を溶かされるとは思わなかった。同じことは二度としない」
するとローランドの脚から炎がゆらめく。
「俺のスキルは『炎』。俺自身が炎なのさ。お前が俺を倒せるかな?」
ローランドが剣を振り、脚でキースの体を蹴ってくる。一発でも当たれば即死コースだ。
集中力を高め、ギリギリで躱し続けるキース。しかしキースからの攻撃が減っていく。
「見てはおれぬわ。我も加勢するぞ」
そう言ってマルガがキースの加勢に入る。
ローランドの剣がマルガを斬ろうとするが、マルガは右手でそれを防ぐ。
「おいおい、俺の斬れないモノがあったのか? お前は誰だ? 人ではないな?」
「我は赤竜。炎は我の味方ぞ」
そう言ってマルガはローランドに踵を落とす。
ローランドはギリギリでマルガの踵落としを回避して、一歩後退した。
「赤竜が敵とは俺も運が悪い」
そう言いながら、ローランドは袈裟切りにマルガに斬りかかる。
マルガは後ろに一歩退いて、ローランドの剣を避ける。
その隙をついてキースの剣がローランドの胸を貫く。
「俺としたことが、キースへの警戒を怠るとは」
そう呟いて、ローランドはドサッと地面に倒れた。
アルナがすぐに駆け付け、回復魔法でローランドの胸の傷を癒す。
「ヤッタわね。これで幹部達を全員倒したわ。凄いわよキース」
「ああ……マルガの協力のおかげで助かった。これで卵の在処を聞くことができる」
周りで戦いを見ていた双子とリタもキースの元へ駆け走ってきた。
「「やったー。キースが勝った!」」
「キースが勝ったよ。本当にキースは強いね」
「いや、今回はマルガの協力があったからだ」
「我は少し協力しただけだ。キースは誇ってもよいぞ」
キース1人では幹部達に勝てなかった。仲間達がいたからこそ乗り越えられた。
キースは今のパーティメンバーと一緒に戦えたことを誇りに思った。




