31話 大戦斧使いベルド
「そうじゃな儂が相手をしてやろう。全員でついてくるといい」
そう言って大戦斧で壁を破壊して、会議室から外の暗闇にベルドが飛び出していく。
「一人だけで俺達を相手しようなんて舐められたもんだな」
「ベルドはAランク冒険者だぞ。お前達が束になってかかっていっても敵う相手ではないわ」
「後で後悔するなよ」
そう言ってキース達も破壊された壁を乗り越えて、暗闇の中へ飛び込んでいく。
暗闇に着地すると、そこは『シュトラウス』の本部の裏庭だった。
キースは素早く魔力を循環させて『肉体強化』を練っていく。赤竜との戦いの成果で、キースの『肉体強化』は限界を突破して練り上げられる。
「キースの体から赤いオーラが噴き出しているよ。どうなってるの?」
スーラが不思議そうにキースに見て呟く。
「それは『肉体改造』の究極形態だ。キースは『肉体改造』を極めたのだな」
アルナが剣を鞘から抜きつつ、キースを見て微笑んでいる。
「どんな技を使おうが、儂には通用せんて」
「あの肉ダルマ、ムカつく」
「ムカつくから、やっつけるのです」
スーラとウーラが双剣のシミッターを四本抜いて、ベルドへ襲いかかる。するとベルドが四本のシミッターを大戦斧で弾き返す。そして横薙ぎに一閃する。
危うい所で、スーラとウーラが退いて、ベルドの一撃を回避する。
「なかなかやるわい」
「スーラ、ウーラ、支援する」
『俊敏15%アップ、膂力15%アップ、防御力15%アップ、攻撃力15%アップ』
するとキースの仲間達にバフの光の粒子が舞い降りる。
次はベルドにデバフをかける番だ。
『俊敏15%ダウン、膂力15%ダウン、防御力15%ダウン、攻撃力15%ダウン』
ベルドが紫色の粒子に包まれる。
「チッ……キースの支援魔法か。厄介じゃのう」
そう言ってベルドはキース目がけて突進してくる。そして袈裟切りの大戦斧を振るう。
それをキースは剣で受け流して、ベルドと対峙する。
「何? キースが儂の大戦斧を受け流しただと……あの非力なキースがか?」
「いつまでも非力な俺と思うなよ!」
キースは逆袈裟に剣でベルドの体を斬りあげる。
するとベルドの革鎧にキースの剣戟の跡が残った。
「私達だって負けてられないんだからね」
「いきますです」
スーラ、ウ―ラーがベルドへ向かって四本のシミッタ―で攻め立てる。そしてリタが疾駆してベルドの頭に飛び膝蹴りをお見舞いする。
たまらずベルドの体が吹き飛ぶ。
そこへアルナが精霊魔法の風の刃でベルドの体を傷つけていく。
「ウォオオー、お前達などに負けぬわ」
そう言ってベルドが立ち上がって大戦斧を肩に背負って、キースに突進してくる。
「忌々しいのはキースの支援魔法。それさえなければ、お前達の攻撃など利かぬ」
ベルドは双子、アルナ、リタなどに目もくれず、キースだけに狙いを定めて突進してくる。
袈裟切り、逆袈裟、横薙ぎと大戦斧を振り回す。
それをことごとくキースは回避し、剣で受け流し、剣で弾き返す。
ベルドの顔がニヤリと笑う。
「儂のスキル『怪力』を喰らえ!」
そう言って大上段から大戦斧を叩きつける。たまらずキースは剣を横にして大戦斧を受け止める。しかし『怪力』に押されて、体制を崩して膝をつく。
ベルドがキースにばかり神経を集中している間に、リタが駆け走ってきて、ベルドに回転踵蹴りを加える。その一撃が効いたのか、ベルドはリタの攻撃を受けて、頭から倒れた。
「ウォオオー、さっきから俺の頭を蹴る奴は誰だ?」
「私よ。ドワーフ」
「面白い、お前から血祭にしてやろう」
ベルドは大戦斧でリタと対戦する。しかしリタは身体能力が高い上に、アマゾネス独特の体術を使う。ベルドの攻撃は全て躱されて、リタの反撃をもらう。
「クソ女、どうして儂の攻撃が当たらねーんだ?」
「それはアンタが只の怪力バカだからよ」
「お前など、キースの支援魔法がなくなれば、すぐにでも捕まえられる。まずはキースだ」
ベルドはリタを放っておいて、キースの元へ突撃してくる。キースはベルドの体当たりを華麗に避けて、剣を構える。
「お前さえいなくなれば、後は簡単なんだよ」
「ベルド……お前は強い。だが、俺も負けられない」
ベルドは大上段から大戦斧を振り下ろす、それをキースは剣を斜めにして大戦斧を受け流して、剣の平でベルドの首を叩く。するとベッキという音がなり、ベルドは白目を剥いて地面に倒れた。
アルナが倒れているベルドの様子を見て、精霊魔法でベルドを回復させる。
「ベルドの首の骨が折れていた。あのままではベルドは死んでいたわね。キースの勝利だわ」
それを聞いた双子とリタはハイタッチをして喜んでいる。
「まさか、ベルドが倒されるとは思いませんでしたね。なかなかキースもやるようになったようですね。次は私がお相手をいたしましょう。この炎の精霊魔法士アウリールが」
「そうはいかないわ。アナタが精霊魔法士ならば私が相手をしましょう」
キースを庇ってアルナが一歩前にでる。
ベルドが倒れた後、炎の精霊魔法士と風の精霊魔法士との戦いが始まった。




