30話 真夜中の侵入
夜中になって、キース達は行動を始める。
装備を準備して皆、キースの部屋に集合する。
「それでは行くか」
キース達は宿屋の主人に見つからないために、窓から外に飛び出した。
そして音もなく着地する。
『シュトラウス』の本部はデリントンの街の貴族地区に近い場所に建てられている。
キース達は誰にも尾行されないように注意しながら、『シュトラウス』の本部の邸に近付いた。
そしてアルナはリタとキースを連れて、精霊魔法で飛翔する。そして双子は跳躍で本部の外壁を乗り越えた。中には警備している冒険者の影は見えない。
キース達は本部の裏門から入って、足音を立てずに廊下を歩いていく。
目の前から冒険者達が歩いてくる。キース達は顔を俯かせて視線を合わせないようにする。
「今まで夕飯でも食っていたのか? 帰りが遅すぎるぞ!」
冒険者達に声をかけられる。このまま答えないと不信に思われる。
「少し酔いが回りまして、少し涼んでいました。申し訳ありません」
「冒険者の癖に酒の酔いに負けるとは情けない奴だ。早くとっとと寝ちまえ」
「はい。そうします」
「ちょっと待て。お前、なかなか良い美少女の冒険者達と一緒だな。こんな美少女達をみたことがないぞ。お前の名前は何と言うんだ?」
「……ギランです」
一応、考えたあった偽名を名乗る。しかし冒険者達は双子、アルナ、リタの四人から離れようとしない。
「ギランか。この女達を俺達によこせ。俺達がいい思いをさせてやるからよ」
「何言ってんの。私達の体に触れようとしないでよ。気持ちが悪い」
スーラの怒りがとうとう爆発した。そしてスーラの右拳が冒険者の鳩尾にヒットする。
「ウガァ」
冒険者の一人がその場で倒れる。それを見た冒険者達が騒ぎ始める。
「おなじギルドの先輩に対して、そういう態度を取るのか。いい度胸だ。すこし痛めつけてやろう」
「そんなことはさせないのです。私も頭にきました」
今度はウーラが冒険者の脇腹に回し蹴りを喰らわせる。するとその冒険者は吹っ飛んで、壁に大穴が開く。
すると騒動を聞きつけた冒険者達が集まってきた。これでは最初の計画が台無しだ。
「スーラ、ウーラ、アルナ、リタ、大人しくしている作戦はなしだ。ここは大暴れといこう」
「「待ってました!」」
「こうなると思ったわ。夜中でも大派閥ギルド『シュトラウス』への侵入なんて無理よ」
「私もやっちゃますねー」
スーラ、ウーラ、アルナ、リタの四人が大暴れを始めた。『シュトラウス』の冒険者達も次々と四人に襲いかかる。しかし四人を抑え込むことができない。
キースも魔力を循環させて『肉体強化』をさせた後、騒ぎに参加して冒険者達を殴り飛ばす。
どんどんと冒険者達が集まってきて、通路が冒険者で埋め尽くされる。
しかし通路は細いので、一度に襲いかかってくるのは四人ほどしかいない。
キース達5人は通路で大暴れだ。次々と冒険者達がキース達に倒されていく。
「あれはキースじゃないのか。非力で追放されたキースだ」
キースを知っている冒険者が大声をあげて、キースの正体をばらす。
「そうだよ。非力と笑われて追放されたキースだ。もうお前達に笑われることはないけどな」
キースは冒険者の鳩尾に前蹴りを突き刺して、大声を張り上げる。
「お前達、夜中に何をしているんだ?」
冒険者の後ろから一人の大柄な冒険者が現れた。ギルドマスターのローランドだ。
「お前はキースじゃないか。追放されたことの意趣返しか?」
「違う『シュトラウス』の幹部達に聞きたいことがあったからだ」
「それは何んだ? ハッキリと言ってみろ!」
「卵!」
それを聞いたローランドの顔が歪む。
「お前達、もう夜中だ。静かに自分の部屋に戻って寝ろ。キースは私の客人だ」
ローランドの声を聞いた冒険者達が不服顔で自分達の部屋へと戻っていく。
「どこでその情報を掴んだ?」
「獣人の隠れ里」
「ついて来い」
ローランドについて廊下を歩いていく。
ローランドはライオンのような髪をなびかせて、堂々と廊下を歩いて行く。
そしてローランドは幹部会議室の扉を開いて、キース達に中に入るように促す。
キースが会議室の中へ入ると、賢者のハンヒェン、炎の精霊術士アルリール、大戦斧使いのベルドが座っていた。そして中央の席にローランドが座る。
「どうしたんじゃ。ローランドよ。なぜ追放されたキースがここにおるんじゃ」
「キースが夜中にこの『シュトラウス』の本部に乗り込んできたのさ」
「ほう、非力で支援魔法しかできないキースがな。それは面白い」
大戦斧使いのベルドが大声で笑う。
追放された時のキースを知っているベルドは笑いが止まらない。
「なぜ赤竜の卵を盗んだ。そのせいで獣人の隠れ里が崩壊寸前になったんだぞ」
「そんなことは俺達の知ったことではない。依頼人に依頼されたから盗んだまでだ」
「依頼人は誰だ?」
「お前達に話すつもりはない」
ローランドは威圧を放って、キースを黙らせようとする。
しかし、キースは赤竜の咆哮で威圧には慣れている。ローランドの威圧はキースには利かない。
「卵をどうするつもりだ?」
「さあな。俺達の知ったことではない。幼竜のうちにティムして利用するのかもしれんな」
「そんなことは許さない。卵は返してもらうぞ!」
「お前達が俺達を倒すというのか……面白い。その喧嘩、受けて立とう」
キースは眦を吊り上げて、ローランド達を睨み付けるのだった。




