24話 獣人の隠れ里からの要請
獣人の傷をアルナが回復させて、デリントンの街まで一緒に連れていく。
そして冒険者ギルドへ連れていき、事情を聞くことにした。
ロミンダが別室を用意してくれたので、この部屋にいるのはパーティメンバーとロミンダだけだ。
「さあ、どういうことか教えてちょうだい」
獣人の男性はスーラに詰問されて、慌てて答えはじめる。
「俺も詳しいことは知らないんだ。いきなり魔獣達が獣人の里を襲ってきて……里長がスーラとウーラを呼び戻せって言ったから、俺は伝令で来ただけだ」
「内容を得ないのです。でも村長が戻って来いというなら、私達は戻らなければならない」
「獣人の隠れ里は、冒険者ギルドも入ったことのない魔巣窟の森の奥にあると言われています」
「スーラとウーラが行くというなら、俺達も行くしかないな。仲間だからな」
キースはそう言ってスーラとウーラを見る。
双子はキースを見て、嬉しそうに微笑んだ。
「さすがはキース。私達、仲間だよね」
「そうなのです。私達はいつも一緒です」
「そういうことだから、ロミンダ。俺達は魔巣窟の森の奥へ入る。止めても無駄だよ」
ロミンダはキースの言葉を聞いてため息をついた。
「キース達が言い出したら聞かないのは知っています。なるべく危険は避けてくださいね」
「じゃあ、俺はどうすればいいんだ? 伝言は伝えたぞ」
「そうだな……デリントンの街でゆっくりとしていてくれ。魔巣窟の森へはパーティの仲間だけで行くから」
「そうかい……気をつけろよ」
獣人の男はホッと安堵の息を吐く。
この獣人の男性は強いタイプではない。俊足を活かして走ってきたのだろう。
魔巣窟の森へ入るならば、足手まといになるかもしれない。
「それじゃあ、魔巣窟の森へ入る準備をして、出発しよう」
「そうだね。里長が呼んでいるなら、早く戻らないとだし」
「村長も私達の帰りを、すごく待っていると思うのです」
冒険者ギルドを出て、魔巣窟の森へ入る準備を整え、デリントンの壁門を出る。
そして街道を歩いて西の森を超えて魔巣窟の森へと入った。
なるべく魔獣を避けながら樹木の間を歩いていく。
すぐに夕陽の陽光が樹木を照らし始めた。
キース達は樹木の上に登り、太い樹木の上で交代して野営をする。
食事は干し肉をかじってすませる。
「交代は2時間交代だ。スーラとウーラ、アルナとリタ、そして俺だ」
「わかったわ。皆、仮眠は必ず取るようにね」
アルナが皆に注意を呼びかける。
キースは毛布に包まって、仮眠を取る。すぐに眠気が訪れて意識を失った。
朝日が昇り、野営が無事に終わった。
キース達は樹木の上を跳躍して、木から木へと飛び移って、距離を縮めていく。
リタの身体能力は高く、全く遅れる素振りはない。
今は獣人の隠れ里の早く到着することが目標だ。
無駄に魔獣達と戦っても意味がない。
それでも、偶然に遭遇してしまった魔獣達とは交戦しながら、森の奥へと進む。
◆
魔巣窟の森へ入って1週間が経った。
まだ魔巣窟の森はどんどん奥まで続いている。
しかし、大きな火山が近くに見えてきた。
「もうすぐ獣人の隠れ里だよ。火山が近くなってきたからね」
「そうなのです。獣人の隠れ里へ行くには、火山を目標にするのが早いのです」
今まで道案内はスーラとウーラが努めていたので、キース達は獣人の隠れ里へ行くルートの目標を知らなかった。双子から離れるつもりがなかったので、その必要がなかったのだ。
森の大きな茂みを潜ると、そこに獣人の隠れ里があった。
しかし、どの小屋も崩壊しており、誰もいない。
「誰もいないなんて、どうなってるの? 里長の屋敷へ急ぎましょう」
「誰もいないなんて変なのです。多分、一カ所に集団でいると思うのです」
どの小屋も崩壊しており、屋根はどれも黒く焦げている。
炎を使う魔獣と戦った跡のように見える。
村長の屋敷へ到着すると、そこは避難所のようになっていた。
そして獣人達が村長の屋敷に集まっているのがわかる。
どの獣人達も戦っていたのだろう、疲労の色が濃い。
キース達は獣人達の間をぬって、村長の屋敷へと入る。
「村長ー。スーラとウーラが戻ったよー。里で何が起こってるの?」
「おおー、スーラにウーラ。戻ってきてくれたか。里は今、ワイバーンの襲撃に遭ってるんだ」
ワイバーン、飛竜種の竜だ。Bランク魔獣となっているが、ワイバーンは空を飛び、炎のブレスを吐く厄介な魔獣だ。そして竜種だけあって鱗が硬い。
里長は玄関に座り込んで、キース達を迎える。
キース達も玄関に座って、里長の話を聞く。
「ワイバーンを操っているのは火山にいる赤竜だ。赤竜がいうには卵を盗まれたという。その卵を返せと儂達を疑っているようじゃ。だから里が襲われているというわけじゃ」
「卵って? 里の者が卵を盗んだの?」
「里の者で卵のことを知っている者はおらなんだ。盗んでもいない。赤竜の八つ当たりじゃ」
そんなことで里を焼かれても仕方ない話だが、相手は魔獣、話してわかる相手ではない。
「そこで、デリントンにいるスーラとウーラに卵のことを探索してもらおうと呼び戻したのじゃ」
「わかったわ。ワイバーンを撃退したら、デリントンへ戻って卵のことを探索するよ」
「そうなのです。ワイバーンに襲われている里を放っておけないのです」
「そうしてもらえると助かるのじゃ。里の者達は疲労しきっている。儂の名前はエメリヒという」
「俺の名前はキースだ。スーラとウーラとパーティを組んでいる。今回の件、協力する」
里長の屋敷に設置されている高台の鐘が大きく鳴る。
獣人達が屋敷に入ってきて、何やら準備を始めた。
「いかん。ワイバーンの襲撃が始まった。スーラもウーラもワイバーン討伐に協力を頼む」
「大丈夫だよ。キースは支援魔法士。だからワイバーンだろうと討伐しちゃうからね」
スーラが元気よくエメリヒに答える。
そしてキース達は屋敷を出て、ワイバーン討伐を始めるのだった。




