19話 宴の夜
アマゾネス達は、昼間のうちに魔獣を狩ってきて、魔獣に肉を使って宴の準備を進めていた。
「今日の夜は宴会だよ。客人もいる。客人の前で恥をかくわけにいかないよ」
ビアンカが指揮をとって、宴の準備が進められている。
アマゾネス達は嬉しそうに魔獣を解体して、宴の準備を始めた。
「リタ、俺達は何もしなくていいのか? 森に行って魔獣くらい狩ってくるぞ」
「キース達は客人だから何もしなくていいの。村でゆっくりとくつろいでね」
リタにそう言われると何も言う言葉が見つからない。
キース達は客人として大人しく、廃墟の中で寝ていることにした。
アマゾネスの少女達のキースを見る目が熱い。
その視線を知って、キースは恥ずかしくなり照れる。
「何を照れてるのよ。ここはアマゾネスの村だから、男性が珍しいだけよ」
「そうなのです。これぐらいの視線で舞い上がってはいけないのです」
スーラとウーラの双子にたしなめられる。
それでもキースは落ち着かない。気分がソワソワしてくる。
「それでは魔力循環の特訓でも行いましょう。まだキースの魔力循環には粗い所があるから」
アルナに言われて、意識を集中して魔力が体内を循環することに意識を向ける。
体内の中で魔力が毛細血管の中を通るように広がっていくことがわかる。
「もっと意識を広げて、もっと魔力を循環させてみて、そうすることで『肉体強化』が強くなるから」
「魔力が体内の全てを循環することによって『肉体強化』よりアップするのか?」
「そういうことよ。まだキースは基礎を会得したに過ぎないわ。『肉体強化』は極めるともっと凄い技になるんだから。特訓は怠らないことね」
アルナにそう諭されて、キースは魔力の体内循環を極めるため特訓に打ち込む。
それを見てアルナは嬉しそうに頷いている。
「キースは魔力だけは無尽蔵に近くあるのに、使える魔法が支援魔法だけなんて勿体ない話だわ。キースが極めるべきなのは『肉体強化』なのよ」
「そうだったのか。俺が『肉体強化』を極めたら、どうなるんだ?」
「体の全てが強化されるわ。俊敏さ。膂力、防御力、攻撃力、察知力、全てね。剣でキュプロスの筋肉を断ち斬れるぐらいには強化できるわ」
それは凄い進化だ。今のキースは初歩中の初歩であることがわかる。
「「私達もキースのように『肉体強化』は使えないの?」」
「スーラとウーラはスキルが『剣士』だから、魔力が少ないので無理ね」
「「キースだけ『肉体強化』できるなんてズルい」」
そう言って、双子は廃墟の中でふて寝してしまった。
その姿が可愛くて笑ってしまう。
キュプロスを撃退した夜となり、アマゾネス達の宴が始まった。
もちろん、キュプロス撃退に参加したキース達もビアンカの隣で宴を楽しむこととなった。
キースの隣にはアマゾネスの少女達が酌をするために座っている。少女達はキースの隣に座って嬉しそうだ。
それを見た双子が機嫌を悪くして、座っている。
アルナはそんな双子を見て笑っている。
ただ、魔獣の肉を香辛料で焼いただけの料理だが、香辛料がピリッと効いて美味い。
「美味いな。香辛料がピリッと効いて、肉汁が口の中に広がって美味い」
「そうだろう。魔巣窟の森には香辛料が多いからな。ここの香辛料を食べたら癖になるぞ」
ビアンカも料理をキースに褒められて嬉しそうだ。
アマゾネスの少女達が次々とキースの器に酒を注いでくれる。それをキースはグイっと飲む。
アルコール度数が高そうな酒で、注意していないと酔いが回りそうだ。
「キース、私のお酒も飲んでよ」
「私たちの注いだお酒も飲んでください」
双子がアマゾネスの少女達を押しのけて、キースの隣に座る。既に酒が回っているようだ。
アルナは相当に酒が強いようで、あれだけ酒を飲んでいるのに素面と同じだ。
「「キース! 私たち酔っちゃった! 少し涼みに行きたいから付き合ってよ!」」
「仕方ないな。あまり森の中には入らないぞ。村を少し出た所までな」
「「やっぱりキースだ。優しいー!」」
双子はキースの腕を引っ張って、村の外れの樹木の枝の上に跳躍する。
キースも『肉体強化』を練って、樹木の枝の上まで跳躍した。
そして樹木の枝の上で三人で座って、夜空を見上げる。
すると二つの月がこうこうと夜空を照らし出していた。
「キース、私達をパーティに入れてくれてありがとう。キースといると楽しくて飽きないわ」
「そうですね。キースといると色々な事が起こって、本当に楽しいです」
「別に俺が問題を起こしているわけじゃないぞ」
「「そんなことはわかってる!」」
キースを挟んでスーラとウーラが樹木に座って、キースにしなだれかかってくる。
スーラとウーラの体はしなやかで柔らかい。
「私ね、キースのこと好きよ。出会った時から。そのことを言っておきたかったの」
「それは私もです。キースを好きな気持ちはスーラにも負けません」
突然の双子の告白に驚くキース。
「二人とも、相当に酔ってるな。明日、二日酔いで大変になっても知らないぞ」
「さっき、アマゾネスの少女達に囲まれているキースを見て腹が立っただけ」
「俺もスーラとウーラのことが好きだよ。一緒のパーティに入ってくれてありがとうな。毎日、本当に楽しくて夢のようだよ」
「「ヤッター! キースに私達の気持ち、伝わってる!」」
双子がキースのことを気にかけていることを、キースは以前から気づいていた。
そうでなければ、常に危ないパーティの前衛を務めてくれていなかっただろう。
「俺はスーラとウーラ、どちらも好きだ。一人なんて選べないからな」
「そこは大丈夫よ。私たちは双子だもの。好きな男性のタイプも一緒だし、ウーラなら焼きもちを焼かないわよ」
「私もスーラ姉さんと同じ意見です。後アルナとキースが仲良くなっても焼きもちは焼きません」
キースの双子が好きと言う意味は、恋というよりも仲間という色のほうが濃い。
そのことを双子達も理解しているようで助かった。
「それならいいんだが……これからも色々と頼むな」
「「わかったわ。任せておいて!」」
それから樹木の枝の上で、酒の酔いが醒めるまで、夜空の月を見上げながら、楽しく雑談をして過ごす三人だった。




