17話 救援要請
魔巣窟の森から帰還してから1週間が経った。
溜まっていた疲労も回復して、キース達の体調も元通りに戻った。
いつものように冒険者ギルドへ行くと、1人の少女を囲んで冒険者が騒いでいる。
少女は革の布を胸と腰にしか巻いていない。
とても怯えているようだ。
「お願いします。私たちの村を助けてください。キュプロスに襲われているんです」
キュプロスといえば単眼の巨人。Bランク魔獣。
キュプロスが襲っているというが、どこの村なのだろう。
キースは少女の姿を見ながら思い悩む。
するとロミンダがキースの隣に立つ。
「あの子、魔巣窟の森にあるアマゾネスの村から、ここまで助けを求めに来たらしいだけど」
なるほど、魔巣窟の森にいるという先住民族か。
アマゾネスといえば、女性ばかりの種族で、勇敢で有名な種族だ。
「私たちの体術では、キュプロスに利きません。キュプロスは今も村の近くの森で暴れています。私達アマゾネス全員で討伐しようとしていますが、キュプロスは平気で暴れています」
アマゾネス全員で対処しているとはいえ、アマゾネス達は無手の拳士が多い。
キュプロスを討伐することは難しいだろう。
「お願いします。私達の村を助けてください」
ロミンダが冷静に一言呟く。
「これは『シュトラウス』に討伐依頼を頼んだほうが良さそうね。準備に三日ほどかかるけど」
「今もキュプロスに襲われているんです。三日も待てません。助けてください」
少女の声に冒険者達は戸惑うが、誰も助けるとは言わなかった。
『シュトラウス』に頼むというロミンダの言葉がキースに突き刺さる。
「誰も行かないなら、俺達のパーティが助けに行こう。俺は支援魔法を使えるから」
「「キースなら、そう言うと思ってたわ!」」
「ここは私達が行くのが最善でしょう」
「待ってください、皆。相手はBランク魔獣のキュプロスですよ。勝てるはずない」
「たぶん勝てないかもしれない。しかし、負けないように戦うことができる。目的は討伐ではなく、撃退。キュプロスが村に寄らないように退けるだけでいい」
そう討伐する必要はない。
2度とキュプロスがアマゾネスの村を襲わないように対処すればいい。
ロミンダは小声でキースに尋ねる。
「危険ですよ……わかっているんですか?」
「わかっています。でも誰かがやらないと、アマゾネスの村が崩壊する」
「わかりました。それでは止めません。安全第一で行動してください」
「ありがとう」
キース達は少女の元へ歩いていく。
少女は期待の目でキース達を見る。
「俺達が行こう。四人のパーティだけど力になりたい」
「ありがとうございます。私はリタと言います。あなたは……」
「俺の名はキース。支援魔法士のキースという」
「「私達は獣人の双剣士、スーラとウーラ」」
「私は精霊使いのエルフのアルナ」
少女は右手を差し出してくる。キースは少女と握手して優しく微笑む。
ロミンダは心配そうな顔でキース達を見ている。
「この間の討伐で、アルナはEランク、スーラとウーラはDランクに冒険者ランクが昇格しています。キュプロスを撃退することができれば、キースさんもBランクになるでしょう」
「わかりました。必ずキュプロスを撃退して戻ってきます」
キース達はリタを連れて冒険者ギルドを出た。
そして西の森へと向かう。
西の森を通り抜け、魔巣窟の森へ入ると、樹木が太くなり、日差しが地面を照らさなくなった。
なるべく魔獣と遭遇しないように注意しながら森の中を進んでいく。
そしてリタの案内でアマゾネスの村へ向かう。
アマゾネスの村は魔巣窟の森の中腹にあるという。
一日で村まで到着するのは無理だ。
夜は樹木の上で毛布に包まって仮眠を取る。
もちろん交代制だ。リタは疲れ切っているらしく、眠ったまま起きてこない。
「よく一人で、この森を超えて来たよ」
「私はスーラと一緒でしたからね」
「この森は深く険しく、そして魔獣が多い。神経をすり減らしたことだろう」
キース達四人は、寝ているリタを起こさないようにしながら、交代で仮眠を取る。
そして朝日が出ると、森の奥へ向けて歩き始めた。
一日歩いて、夜には野営をしてアマゾネスの村を目指す。
しかし、三日歩いても、まだアマゾネスの村は見えない。
本当に方向は合っているのかリタに聞くが、リタははっきりと方向を示す。
リタがデリントンの街へ救援を要請してから、歩いて4日が経った。
もし『シュトラウス』に頼んでいたら、もっと日数が経っていたことだろう。
キース達の救援が間に合えばいいが。
「見えてきた。見えてきた。アマゾネスの村が見えてきた」
キース達がアマゾネスの村に着いた時には、アマゾネスの村の小屋はことごとく壊され、破壊されていた。
しかしリタの声を聞いたアマゾネス達が、リタの周りに集まってくる。
「リタ、救援は呼べたのかい?」
年長者のアマゾネスがリタに声をかける。
リタが返事をする前に、キース達を見つめた。
「デリントンの街から救援にきたキースだ。支援魔法を使う」
「たった四人で救援かい? 腕は確かだろうね?」
年長者のアマゾネスはキース達を値踏みするように目を細めた。




