14話 事前準備
西の森から戻ってきたキース達は冒険者ギルドに寄って、討伐した魔獣の魔石と討伐部位を解体所のカウンタ―に置く。
その数はいつもの3倍以上に多く、トロールの魔石と討伐部位も入っていたので、ロミンダを驚かせることになった。
「これはいったい、どういうことですか? 討伐した魔獣の数も三倍以上ですし、Cランク魔獣のトロールまで討伐しているじゃないですか?」
「西の森の奥深くでトロール三体を発見したんだ。放置しておくのも問題かと思って、思わず、討伐したんだけど……すみません。忠告を聞きませんでした」
「無事に戻ってきたんですから良かったですが、最近のキースさん達は無茶がすぎますね」
ロミンダが頬を膨らませて不満を表す。
解体所のカウンタ―の受け皿の上に置かれている金貨を革袋へ入れて、キースは冒険者ギルドを後にしようとする。
するとロミンダに呼び止められた。
「明日は別室で魔巣窟の森の関する知識を勉強しましょう。魔巣窟の森にいる魔獣や魔巣窟の森の中で生活している民族についても教えておく必要があります」
「……ありがとうございます」
「こうなったら、徹底的に魔巣窟の森についての知識をキースさんに教えるしか、方法はないですから。私はキースさんの専属アドバイザーです。それだけのことはします」
そう言ってロミンダは優しい瞳で微笑んだ。
キース達は冒険者ギルドを出て、宿へと戻る。
そして宿に着いたキース達は食事も取るのを忘れて泥のように眠った。
◆
朝、起きると、やけに腹が空いている。
そういえば、昨日の夜は食べるのも忘れて寝てしまったんだっけ。
キースが起きた時には、既に双子もアルナも起きて、朝食を済ませていた。
キースも慌てて、朝食を取って、冒険に行く準備を進める。
そして宿屋を出て冒険者ギルドへ四人で向かう。
冒険者ギルドへ着くと、すぐにロミンダに呼ばれて別室で魔巣窟の森に関する勉強をすることになった。
ロミンダは親切丁寧に魔巣窟の森についての知識をキース達に教えていく。
双子は魔巣窟の森出身だが、アルナとキースはそうではない。アルナとキースはロミンダの説明を真面目に聞いて魔巣窟の森についての知識を深めていった。
「魔巣窟の森へ入れば、西の森のようにデリントンの街へ戻ってくることはできません。森の中で野営することになりますので、その準備も持っていくのを忘れないようにしてください」
魔巣窟の森は西の森の奥にある森で、デリントンの街の西側を覆っている広大な森林地帯だ。一度、魔巣窟の森へ入ってしまうと、すぐに森から出てくることはできないのである。
「魔巣窟の森の魔獣は、ほとんどがCランク魔獣以上の実力を持っていますから、なるべく戦闘は避けて、観察した後に、討伐できそうな魔獣だけを狙ってください」
キース達も無謀な冒険をするつもりはない。自分の実力以上の魔獣と遭えば、森の中を逃げ回るつもりでいる。
「魔巣窟の森の中には、森の中で暮らす先住民族達がいます。そこで冒険者は休憩をさせてもらい、必要物資を補給して、次の冒険へ赴くことをお勧めします」
なるほど、先住民族の村を中継地点にして、森の奥へと進んでいくのか。どんな民族が住んでいるんだろうか。
「先住民族の中には危険な民族もいますので、注意が必要です。どんな民族であるか、察知するのも冒険者の資質だと思ってくださいね」
キースとアルナは言われた通りにメモに書いて、頭に刻み込んでいく。
どんな知識でも自分の身を守る糧になるかわからないからだ。
「絶対にB級、A級魔獣との接触は避けてくださいね。命の保証がないですから。まだ、キースさん達は魔巣窟の森では新人であることを自覚して行動してください」
「ありがとう、ロミンダ。ずいぶんと頭の中で整理がついてきたよ」
「私もキースと同じように覚えています。危険には近寄らないように気をつけるわ」
「私達は魔巣窟の森の出身だから、危険を察知するのは慣れているから大丈夫」
「そうです。スーラと私に任せてください」
こうしてロミンダの魔巣窟の森の関する講義が終わった。
キース達は冒険者ギルドを出て防具屋へ行き、野営に必要な準備を購入して、リュックに詰め込んでいく。
「これで野営の準備も終わったわ。あとは魔巣窟の森へ行くだけね」
「魔巣窟の森では、ぐっすりと休める時間はほとんどないのです。皆で交代しながら野営を行なうことになるのです。ですから休める時に休む練習も必要と言っておきます」
「わかった。ウーラの言う通りだね。魔巣窟の森へ入ったら、休める時には休もう。無理は禁物だ。スーラとウーラ、2人のことを当てにしているから、しっかり頼むな」
「「任せてちょうだい!」」
防具屋を出て、デリントンの街の大通りを歩いて、壁門を潜って西へ向かう街道へ出る。
西の森を抜ければ、今まで冒険したことのない魔巣窟の森がキース達を待っている。
キース達四人は、街道を歩きながら、目を輝かせた。




